内容説明
海軍軍人、天文学者、クリスチャンとして、明治から戦後までを生きた秋吉利雄。この三つの資質はどのように混じり合い、競い合ったのか。著者の祖母の兄である大伯父を主人公にした伝記と日本の近代史を融合した超弩級の歴史小説。『静かな大地』『ワカタケル』につづく史伝小説で、円熟した作家の新たな代表作が誕生した。朝日新聞大好評連載小説の書籍化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
194
池澤 夏樹は、新作中心に読んでいる作家です。大日本帝国軍人に関しては悪いイメージしかありませんが、敬虔なクリスチャンにて天文学者、これほどまで清々しい軍人を知りませんでした。非常に難しい時代を生きた傑物を見ました。本書は、今年の最長編にてBEST20候補です。 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=240812023/04/06
KAZOO
90
この作品は朝日新聞に1年半にわたり連載されたものですが読まないでこの本になって読みました。池澤さんの大伯父さんを主人公にしてその人物が大正・昭和の時代を生き抜いてきたことを読ませてくれました。海軍軍人で天文学者、さらにはキリスト教徒(この本の題名は讃美歌からきています)であった主人公が海軍兵学校、海軍大学校、東京大学などで学び、どちらかというと軍人よりも学究的な人物であったと感じます。作者の父親の福永武彦や日野原重明先生等も登場します。子供や妹あるいは連れ合いが亡くなったりしますがそういう時代だったのです2023/05/24
kawa
35
海軍軍人、キリスト教者、天文学者と異なる側面を併せ持つ秋吉利雄氏を主人公に描く長尺歴史ドラマ。秋吉氏は著者の大伯父で実在の人物の由。主人公の兵学校仲間として架空のM氏を据え、著者がインタビューで述べた(今の)「政府はウソをつくし、文書を焼くし、メディアはあおるし。大衆はころころ(意見が)変わる。戦争中と同じことをしているなと思いますよ」を上手く連想させ考えさせられる。読みどころ多し。2023/04/12
KEI
33
朝日新聞に連載されていたのを夫が時々読んで刊行されたのを読みたいと言うので借りたが、本の厚さに私に回って来た本。著者の大叔父に当たる秋吉利雄氏の生涯のノンフィクション。海軍軍人、天文学者、キリスト教信者であった秋吉氏が死を前に回想していく。あの戦争はなんだったのか。軍人とキリスト教信者との両立の悩み。大正から昭和にかけての軍の独走に対する反感。同じ軍にいながらも一歩引いた視線で情勢を見ていた姿が心に残る。2024/11/29
どぶねずみ
27
(朝日新聞連載中に毎日欠かさず読んでいたので、連載終了日22年1月31日を読了とする)著者の大伯父にあたる秋吉利雄さんの生涯について。私が全く存じ上げない方だったが、本書によるとエリート教育の海軍兵学校より海軍軍人となり、その後天文学者として世に憚り、ローソップ島で皆既日食を記録するという功績が天皇陛下の目に留まったようだ。最期は戦死した友のことを思って亡くなっていく。戦争の生々しい内容ではあるが、身内から小説化されて残されていくことがとても素晴らしい。2022/01/31
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