内容説明
「政治と道徳の学問の土台をなす真理は、数学のような厳密な学問的な調査によらなければ、そして比較を絶するほど複雑で広範な調査によらなければ、見いだすことはできない」。序文に記されたこの言葉通り、本書全体の三分の一を占める長大な「第16章 不法行為の分類」においてベンサムは人間の不法行為のありようを執拗に追跡し、精緻な考察を繰り広げていく。そこに映し出されるのは、科学に立脚して立法と道徳を問いなおし、完全なる法体系を打ち立てんとするベンサムの強靱な意志である。幸福とは、人間の道徳とは、そして法の目的とは──。哲学史に燦然と輝く重要古典、待望の完訳。
目次
第14章 刑罰と不法行為の均衡関係について/第15章 刑罰に与えるべき特性/第16章 不法行為の分類/I 不法行為の種類/II 区分と小区分/III 第一種の不法行為の再分類/IV この方法の利点/IV 五種の不法行為の性格/第17章 法理学の刑法分野の境界について/I 私的な倫理と立法の技術の間の境界/II 法理学の分野の分類/結語としての覚書/訳注/訳者解説 『道徳および立法の諸原理序説』を読む/訳者あとがき/索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
44
フランス革命前のイギリスの法律、司法の状況は腐敗していました。人々は混乱し、明確で厳正な司法が求められていたわけですがその混乱の中、見事に功利主義を元に法律的体系を作り上げたのがベンサムその人です。動機、意図、状況、想定の誤りによって刑罰の重さの高低差を上手く操作するということが司法の役割であると彼は言います。特に法学部に入る学生には読んで欲しい本です。ベンサムの理論は現代法学においても十分通用しますし通用どころかまあ、現代法学を形づくったのは間違いなく彼でしょう。2023/07/05
mim42
4
下巻の大半が「不法行為の分類」の章に割り当てられる。私のような、法律に1ミリも興味のない人間は、読むべきではないかもしれない。上巻に引き続き、分類の妥当性に疑問を感じるが、思考の軸や論理組み立て過程は興味深い。いま、「そもそもなぜ私はこの本を読もうと思ったのか」について考えている。間違えたのかも。2022/12/22
有沢翔治@文芸同人誌配布中
3
「最大多数の最大幸福」の理論に法律とはどうあるべきなのか、特に刑罰とはどうあるべきなのかを論じていく。さらにこの理論はパノプティコンの話とも関係してくる。 https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51532978.html2024/03/04
Hiroshi Higashino
1
斜め読み.この本を読むなら『結語としての覚書』を読んでから全部読むか判断したら良いかもしれない.訳者解説もまとめとして参考になる.どちらにせよ法理学についての序論といった感じなので、功利主義についてであれば別の本がいい.2023/03/11