内容説明
ロシアのウクライナ侵攻で明らかになった自由・民主主義国家と権威主義国家の角逐、すなわち「米欧」VS「中ロ」新冷戦の構図。しかし、「米中『対立』に基づく世界観や先進国の視線だけで、現在の世界が捉え切れるものだろうか。第一に、非民主主義国を『権威主義体制』諸国としてまとめて理解し、民主主義国との『異質性』を強調するあまり、ロシアや中国などといった国は『合理的な選択ができない』専制主義の国と非難するにとどまり、彼らがどのような世界認識や価値に基づいて政策判断をしているのかが見えなくなる可能性があろう。第二に、先進国とともに中国やロシアなどを主語として、開発途上国は『客体』として描かれることが多い。だが、むしろ新興国や開発途上国を主語として、なぜ彼らが時には中国なり、ロシアなりを選ぶのかという視点こそが重要なのではないか。またその際にはそれぞれの国が先進国、そして中国やロシアへの政策をいかにして決めているのかを、その内在的なコンテキスト、国内政治のありようなどから理解することが必要になるだろう」(本書「序章」より抜粋)。 「『米中冷戦』『米中競争』論では見落とされがちな、ユーラシアの広大な空間の、相互にかけ離れた固有の歴史と政治を持つ諸国家と諸勢力の主体性」(同「まえがき」より)について現在、日本のアカデミズムで第一線に立つ研究者たちが明解に論じる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ピオリーヌ
11
400頁余りのボリュームだがさくさく読める。ユーラシアのさまざまな国々の歴史認識、国内政治と対外政策の連関等が全17章に及び描かれる。中でも印象に残ったのは2021年に発生した「駐リトアニア台湾代表処」問題。これはリトアニアに台湾の代表処を新設する際の名称問題であり、「台湾独立」を印象づけかねない「台湾」を用いたリトアニアに中国は経済的制裁手段を取り、反発したリトアニアが中国から台湾へ乗り換えた問題。リトアニアにとって台湾は大国。リトアニアの二倍の人口、欧州五位のGDP、(オランダに相当)半導体など2024/06/22
バルジ
3
本書の特徴は大きく分けて以下の通りである。「民主主義」「権威主義」といった価値観や「親米」「親中」といった二元論的な区分を排し、それぞれの当事国が抱える内政的要因、来歴等を考慮しあくまで「主体的」なアクターとして捉える事である。本書の全17章はこうした視座から論じられており、従来あまり馴染みのない視座が得られ非常に有用な一冊となっている。殊に東南アジアの内政的要因を孕んだ「主体性」は米中対立の従属変数として捉えられがちな同地域への眼差しを根本的に変える。ロシアの反政府ナショナリズムも興味深い。2023/05/05
ラピスラズリ
1
「中小国を主語として捉える」というこの本のポリシーに、自分自身への反省と、ポリシーの妥当性を感じた。この本の「おわりに」の節でまさに述べられているように、世界を大国を中心にした観点で見てしまい、中小国を「大国の機嫌を伺う存在」のような主体性の乏しい存在として捉えてしまう傾向が世の中にはあると思う。中小国が及ぼせる力は確かに大国よりも小さいかもしれないが、彼らは複雑な国際情勢の中で自分がどう振る舞うか必死に考えていて、主体性を持って行動しているということを改めて認識できた。2024/02/14
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