内容説明
北朝鮮の市井の人々が描かれた文学を読む。
北朝鮮の市井の人々を描いた作品。
1988年に北朝鮮で刊行され、後に韓国で出版。さらにフランス、アメリカでも翻訳出版された。
アメリカの「ライブラリー・ジャーナル」で、2020年のBest Books翻訳文学部門の10冊に選出。
離婚を望む歌手である妻と、寡黙な技術者の夫。そして、その離婚の審議に当たる判事と、野菜の研究者として生きる妻。二組の夫婦の姿を軸に、地方都市の情景や、そこに生きる人々の心情を描く。
「北朝鮮の人が読む北朝鮮の文学とは何か?
1988年に出版されたペク・ナムリョンの小説『友』は、“北朝鮮”という言葉から思い浮かべるロケット弾や軍事パレードではなく、日常を呈している。〈中略〉
小説は、投機的なニュースよりも恒久的な事実を提供するかもしれない」
――― New York Times Book Reviewより
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
24
北朝鮮って思想的な問題で自由に離婚もできないの?家庭が全ての基本という考え方はちょっと締め付けがすぎるな。2023/05/11
フランソワーズ
14
北朝鮮の”体制側の作家”の道徳的小説。主人公チョン・ジヌ判事がある一件の離婚問題を扱う。最初こそ妻側に同情的であったが、夫を始めとした周辺の調査をするうちに、この夫婦の不和の本質的問題を看破。離婚という解決策ではなく、やり直しという道を選ばせるが、判事自らの冷め切った夫婦仲を改めて再生させることにも繋がる。北朝鮮にも私たちと同じような恋愛の喜び、結婚生活のうちに訪れる苦労といったものが描かれていますが、やはり一家庭、一個人がみな国家に従属した存在であるということを随所に感じられました。→2023/05/14
真琴
11
北朝鮮文学。離婚相談に訪れた歌唱団の歌手と機械工の夫。その相談を受けた裁判所判事と農産物の品質改良従事者の妻。この二組の夫婦(家族)を中心にした物語。1980年代の北朝鮮の地方都市の様子、工場や芸術団、家庭というものを窺い知ることができた。「国家承認を受けた作品」でありフランス、アメリカでも翻訳されていることでも貴重な作品だと思う。2023/05/07
Yuzuki
4
ℝ𝕖𝕡𝕠𝕣𝕥 ➫今現在も北朝鮮に暮らしている作家の作品、北朝鮮の人が読む北朝鮮の文学という紹介文に惹かれて読んだ。将軍様を讃える内容じゃなく、市井の人の普通の暮らしに起こった「離婚問題」を題材に拗れた夫婦の関係を当人達のため何より子どものために丁寧に解き再生させた主人公の判事の行動と心情を描くストーリーはとても温かかった。私が知る北朝鮮の様子は日本のメディアが報じる過激なものばかり。そこに暮らす人が毎日どんな暮らしをしてどんな仕事をしているのか…はっきり言って知らなかったので読んでいて興味深かった。2023/07/07