内容説明
小島に一人で暮らす元医師のフレドリックは、就寝中の火事で住む家も家財道具もすべて失った。その後警察の調べで火事の原因が放火であったことが判明、フレドリックは保険金目当ての自作自演だと疑いをかけられてしまう。ところが、火事はそれだけではおさまらなかった。付近の群島の家々が続けて放火されたのだ……。幸い死者は出ていない。犯人の目的はどこにあるのか? 〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉で人気の北欧ミステリの帝王最後の作品。CWAインターナショナルダガー受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ27
62
題からすると前作の続編という気もしようが、あの時のフレデリックは67歳・・8年後のこの作品は70歳。まぁ、盟友編とでも。サスペンスながら、時間をかけてゆっくり味わった感覚ではエイジズムが貫く日記とも受け取れた。自分の家が不審火で焼失し逃げ出すとき履いた右足だけ2足から始まり、サイズ違いを入手、再度注文でゲットするまでの1年が描かれる。フレデリック、娘のルイース、リーサ(30歳余も年下ながら、思慕が隠せない)挿入されるのは給仕をしていた父や激しく愛した今は亡き妻ハリエットとの思い出。特にルイースの在り様が並2023/08/02
pohcho
62
スウェーデンの島に一人暮らす元医師の老人が主人公。自分の家が火事になり放火の疑いをかけられて・・と、一応ミステリ仕立てではあるが、それ以外の話が多すぎて文学のような読み心地。あとがきにもあるが、老人が自分より随分若い女性に対してやたらグイグイ迫る様子に驚いた。作中に登場する、首が痛くて医者に行ったらがんと診断された患者の話は作者自身の経験。薬局店の肥満した妻が自分の体を餌にヒルを捕獲する話は、何故そんな話が突然出てくるのか謎だけど、そういうのがたくさんあって話がスムーズに流れないところは好み。2023/05/16
雅
60
登場人物にあまり共感できなかったけど、重たく暗い世界観に飲み込まれる。2023/07/22
タツ フカガワ
60
前作から8年後という設定の続編は、秋のある夜、フレドリックが炎に包まれる自宅から逃げ出すところから始まる。が、警察は保険金目当てにフレドリック自ら放火したのではと疑惑の目を向ける。70歳の元医師であるこの男、ときに傲慢独りよがりで女性記者に妄執を抱くかと思えば、何かというと昔の思い出に浸る。そんなクセの強い男が孤独と老いに怯える日々から新たに足を踏み出すまでを描いた物語。ここまであからさまに老人を描いて面白いという小説も希有で、スウェーデン製ブーツが注文から10か月後に届くという印象的なラストもよかった。2023/06/26
星落秋風五丈原
42
「およそ一年前の秋の夜、家が全焼した」 という文章で始まる。ヴァランダーシリーズで知られるマンケルなのだから、当然この火事は放火であり、犯人捜しが始まると想像できる。しかしマンケル58歳の時に書いた主人公フレデリック・ヴェリーンは元医師で70歳だ。捜査権限がなく、自身に降りかかった災難だとしても、おいそれと動けない。それどころか、放火の疑いをかけられ被疑者になってしまう。ところがその後、周囲の島でも放火らしき火事が連続して発生する。2023/05/09