内容説明
家族を捨てて逃げてきた不倫カップル(はねつき)。逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生(ゆすらうめ)。新興宗教の元教祖だった老齢の婦人(ひかり)。親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹(ままごと)。子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男(かざあな)――「家」はいつもそこにあり、なにも言わず受け入れてくれる。安息を手に入れたはずの住人たちはやがて、奥底に沈む自身の心の澱を覗き込むことになる。傷ついた人々が、再び自分の足で歩きだすまでを「家」とともに描く連作短編集。
目次
はねつき
ゆすらうめ
ひかり
ままごと
かざあな
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
72
駆け落ち、罪を犯しての逃亡、家族や恋人と距離を置きたいなど、それぞれの事情で行き詰まり逃げてきた人ばかりが入れ替わり立ち代わり入居する郊外の古い借家。小さいながらも緑豊かな庭と穏やかな住環境のさいはての家は安息の地なのか。好きな彩瀬さんの小説、大好きな公子さんの解説なので読む前からわくわく。共感、驚愕、恐怖、安堵、さまざまな感情が押し寄せてきた。やっぱり彩瀬さんは面白い。公子先生の解説はやはり絶品!2023/04/28
tenori
65
読み終わって、タイトルの意味にじわっとくる感じ。地形的な最果てじゃなくて、人生のさいはて。追い詰められてはいるけれど、そこで終わりじゃない。道は途絶えるように見えて、実は続いているんだよね。そんなことを思わせてくれる、シビアだけど温もりを感じる連作短編集だった。ある一軒の古びた借家に入れ替わり住むことになる訳ありな人々の過去と現在。そして未来を予測させながら終わるところが滋味深くて上手い構成だなと思う。2023/06/05
piro
65
これこれ!彩瀬さんのこういったの読みたかった!郊外に建つ築40年以上の家に纏わる連作短編集。古いけれど手入れがされた家、緑豊かな庭。何かから逃げて来た人達にとって、そこは心を落ち着ける事ができるオアシスだった…と思っていると突然おどろおどろしい「何か」が襲いかかる様に現れる。陰と陽、明と暗のコントラストが秀逸で、彼らが目を逸らしていたもの、恐れているものが容赦なく描き出されます。でもそこに絶望感は無く、小さいけれど確かな光が感じられる。解説で評される通り「残酷で容赦なく、そして優しい物語」でした。2023/01/26
セシルの夕陽
54
初読み作家。5話連作短篇集。古い借家には、安住の地を求め、ワケありの人たちが移り住んでくる。家庭がある年上の常連客と駆け落ちした女。新興宗教の元教祖など。話始めは明るい兆しを感じるが、読み進めると胸がざわつき、落ち着かなくなってくる。その家には、今までフタをして直視してこなかった本来の自分を、浮き彫りにする魔物が住んでいるのかも⁈ 大家さんや、隣の高齢者ホーム、不動産屋の真っ当さと明朗さとの対比がおもしろい。南向きの明るい庭が、逃げてきた現実と向き合う光となっているように感じた。『ままごと』が1番好み♡2023/03/27
b☆h
48
ある一軒家をもとにした、時系列はバラバラの連作短編集。構成は、『うつくしが丘〜』によく似ているけど、内容は違う。この家に辿り着く生きるのに疲れた人ばかり。ハッピーエンドといえるものは少ないけど、自分らしく生きることについて考えさせられるのは、やっぱり彩瀬さん作品らしい。自分と向き合うのって大変だし、折り合いがつかないことも多いけど、逃げるのも一つの選択肢だと思わせてくれる優しさもある。今読めたことに巡り合わせを感じた。2023/07/19