内容説明
写本仕事でなんとか生計をたてる清二郎は、大塩平八郎に心酔して世直しを決意。同じころに出逢った破戒僧から見込まれ、「泡界」と名を変えて僧となる。やがて〈大塩の乱〉で師が非業の死を遂げ、泡界は違法な刷り物で世を掻き乱し、復讐をはたそうと暗躍する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
101
読み巧者の杉江松恋と縄田一男が絶賛も当然か。同じ大塩平八郎の乱を扱った伊東潤作品は伝記的部分が妙に生真面目で停滞気味だったのに対し、徳川の天下なぞ知ったことかと暴れまくる男の生き様を描くのだから。負傷して乱を生き延びても大塩の遺志を継ぎ、怪文書をバラまいたり新たな騒動を支援したりとやりたい放題の姿は退屈する暇もない。公儀の追手も迫り何度も危機に陥るが、持ち前の度胸と弁舌で跳ね返す場面は迫力満点だ。久しぶりに痛快娯楽時代劇に徹した読み物を楽しんだ。次巻では江戸に上って何をやらかすのか、今から期待してしまう。2023/04/30
harukawani
6
え、読メのレビュー1番乗り?超おもしろいのに!!はじめての東郷隆、最高でした。大塩平八郎に心酔した清二郎、平八郎の非業の死を見届けた後、破戒僧から泡界の名をもらって僧となり、違法なビラ配りで政道を正さんとする。セリフにも、戯れ唄にも、地の文にも横溢する熱。七五調の軽快なリズムに乗せられ、泡界の檄文に奮い立たされる。政治へのうっぷんが溜まり、幕末へと向かっていく時代。倒幕へのスタートライン。虚実ない交ぜの、清々しく気持ちの良いエンタメ本でした。江戸編も来月刊行の由。楽しみ以外の何もない。2023/03/24
ふる3
3
私腹を肥やし民を疲弊させる官僚、大商人に鉄槌をくらわす大塩平八郎。共感する者は泡界という坊主になり、大衆を煽るかわら版を配布。大塩や一味を殺そうとする役人たちとの熾烈な闘いを描く。 かなり面白かった。書評家杉江松恋氏が推すだけのことはある。いわゆる勧善懲悪型の小説だが、主人公の内面や当時の風物の描写と相まって、極上の読み物となった。2023/05/16
chuji
2
久喜市立中央図書館の本。2023年2月初版。書き下ろし。次作は江戸?大塩平八郎の乱前後譚を面白おかしく描く。2023/04/13