内容説明
よい外国人じゃなきゃ、ダメ? 台湾出身で〈日本語に住む〉著者が問う〈ふつう〉への抵抗。小さな声も自由に羽ばたき出すエッセイ集。3歳で台湾から日本に移り住んだ著者が、日常で味わった小さな違和からアイディンティティをめぐる問題、カズオイシグロから「愛の不時着」まで文学・映画を読解する批評文を収録し、日本の〈ふつう〉をやわらかに揺すぶるエッセイ集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
225
エッセイ&対談集。「台湾大好きー!」なんてヘラヘラ言ってる(僕みたいな)輩に強烈なメッセージを浴びせかけます。ポストコロニアリズムの問題とジェンダーの問題への厳しいご指摘に、僕なんてヘナヘナってなってしまいます。「誰しもが、躓き、間違う可能性がある。躓いた記憶が疼く限り、できる限り、自己点検を怠らずにいたい」という表現に、僕としても姿勢を正します。2023/04/16
fwhd8325
61
温さんの作品読むことは、私自身の中で無意識に発している言葉や、行動に気がつかせてくれる。それは烈しく糾弾するにでなく、静かに静かに語りかけてくれる。熟々、日本は島国だと感じる。それは、私たちが持っているDNAのようなものが影響しているのだろうか。それとも、一部の権力が阻害しているのだろうか。しみじみと考える一冊でした。2023/06/17
ちえ
40
図書館の新しい本のコーナーにあって借りてきたけれど、この本はすごく良かった。台湾生まれで3歳で日本に来た作者。「国」「言葉」「国籍」…。温さんにとっての「国語」、台湾、日本、中国という国家間の問題や歴史。それからジェンダー、また日本にいるマイノリティの問題。ちょうど選挙前後で読んでいて、私達が政治に何を求めるのか、参加することについても深く思わされる文章だった。ゆっくり読んだ。作者の本はまた読んでいきたい。2023/04/23
踊る猫
36
タイトルに込められた「毒」について、読み終えた後今一度考えてしまった。私なら私は彼女のような作家を「バイリンガル」と見なし、「クレオール」(!?)的な言語感覚を有した書き手として扱ってしまうのかもしれない。だがもちろん、それは「何も彼女の書いたものを読んでいない」と表明するに等しい。「オンナ」で「ガイジン」だから、とナメてかかるのではなく彼女がもっとつぶさに書き記す日本語と台湾語、日本と台湾の間でのアイデンティティの分裂とそこから自分を選び取る決意を読み取らなければならない。そうした決意は実に凛々しく映る2023/03/23
tetsubun1000mg
27
台湾生まれで3歳で日本に来たという人生が、こんなに影響をもたらすのかと思わされた。 日本語で考えて日本語しか話せないのに日本では外国人と言われる。 台湾に行けば日本人みたい。 中国では、台湾人と言うのがはばかられる。 どこにいても居心地が悪い思いを持ってしまう筆者。 台湾人と結婚した母を持つ「一青窈さん」の姉「一青妙さん」のエッセイを思い出した。 日本の教育を受けた台湾人のお父さんは、台湾を出て日本にきて早稲田大学に入学して生涯日本に暮らしたという。 その気持ちに似ているような気がした。2023/03/21