岩波ジュニア新書<br> 原子力災害からいのちを守る科学

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岩波ジュニア新書
原子力災害からいのちを守る科学

  • ISBN:9784005007356

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内容説明

放射線は,私たちの体にどう影響するのだろう.そもそも「原子力」とはどういうエネルギーか,放射性物質はほかの物質とどう違のうか,半減期や除染の本当の意味などを,中学までに習った理科の知識をもとに,周期表やDNAの基礎からやさしく解説.中学・高校の副読本や課題図書に最適.これからどうするか,未来を考えよう!

目次

序章 東日本大震災のもたらしたもの
東北地方太平洋沖地震と大津波/原子力発電所への大地震の影響/放射性物質の飛散/ヨウ素とセシウム/除染/これからどうする?/この本について
第1章「原子力」とはどういうエネルギーか
1.原子力のエネルギーとは何だろう?
水力,石油,石炭,そして原子力/原子核からエネルギーを取り出す/不安定な原子核が放射線を出す/恒星の中,超新星爆発などで起きる原子核反応
2.放射性物質と放射線の発見
X線にはじまる放射線の発見/原子の構造の発見/α線,β線,γ線/原子の質量の不思議
3.ウランの原子核からエネルギーを取り出す
原子爆弾か原子力発電か/核分裂でできる元素/「ウランの濃縮」とは?/人類最初の原子炉/核実験と第五福竜丸の被曝
4.半減期とは?
長い期間住めない地域ができるのはなぜ?/半減期/除染は放射性同位体の移動/核廃棄物をどうする?/宇宙と地球のはなし
5.単位の話――ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)
ベクレルとグレイ/シーベルト――生体へのダメージの程度を表す/放射線の瞬間的な強さを表す
第2章 放射性物質とはどんなものか
1.元素の周期表で元素の位置を確認する
元素の周期表が物質の理解を助ける/元素の周期表ができるまで/元素の周期表と放射性同位体
2.放射性物質と元素の周期表
物質は原子のまま存在するのではない/セシウムとナトリウム――1族の仲間/ストロンチウムとカルシウム――2族の仲間/ヨウ素と塩素――17族の仲間
3.原子爆弾と原子力発電と元素
ウランとプルトニウム/原発の燃料のウラン/資源としてのウランとプルトニウム/ナトリウムは不安定な金属/水素ガスが水素爆発を起こした
4.元素の周期表と化学結合
原子の時代/イオンで存在する粒子/分子で存在する粒子
第3章 放射線は生物にどのように影響するか
1.遺伝子の本体DNAへの影響
生命の歴史と生命の尊さ/生物の特徴と放射線の影響を受ける遺伝子/染色体とDNA/染色体と遺伝子/生殖細胞と染色体/DNAの構造/DNAの複製/DNAの働き/設計図としてのDNA/DNAの修復
2.今おきていること,子孫に受け継がれること
身の回りの放射線/放射線の生体への影響/自由電子のDNAへの直接作用と間接作用/DNAが損傷するとどうなるか/DNAの修復機能/放射線量と障害の程度/確定的影響と確率的影響
3.原爆および原発事故からの教訓
広島・長崎に投下された原爆の特徴/広島・長崎に投下された原爆とがん/チェルノブイリ原発事故のヒトへの影響/東海村JCO臨界事故からの教訓
4.医療・農業・研究での利用
医療分野への利用/農作物への利用/農薬を使わない害虫駆除/人為突然変異による品種改良/検査・計測分野への応用/分子の性質を変える
第4章 どうしたら科学で身を守ることができるか
1.放射性物質はどのように飛散し濃縮するか
さまざまな化合物になっている放射性物質/気体,液体,固体の状態/放射性物質は大気から地上へ/コロイド状態にある放射性物質/コロイド粒子と除染/放射性物質の濃縮は続く/放射性物質をアボガドロ定数6.02×1023で考える/セシウムは細胞に取り込まれやすい/ストロンチウムは骨に取り込まれやすい
.コラム コロイド粒子の研究とアボガドロ定数
2.ゴミを減らす方法と放射性物質を減らす方法の違いは何か
昔はゴミを自然にもどした/ゴミを燃やして減らす/プラスチックを燃やすとダイオキシンが発生した/放射性物質を濃縮する方法と希釈する方法/放射性物質を吸着させて濃縮する方法
3.毒も薬になる,薬も毒になる
放射性物質も毒?/毒を見分ける/塩素の化合物も毒となる/殺虫剤DDTが体内に蓄積した/フロンガスによるオゾン層の破壊/水俣病を発症した水銀の体内濃縮/イタイイタイ病を発症したカドミウムの体内濃縮/水銀やカドミウムや鉛は顔料にも用いられた/放射性廃棄物も公害物質か
4.身を守るために物質の性質をもっと知ろう
現代はプラスチックの時代/からだに必要な元素とは/三大栄養素も炭素の化合物/いろいろな放射性同位体の中で生活してきた/放射性同位体と地球の年齢/放射性物質とどのようにつき合ったらよいか
終章 科学は何ができるか
放射能と生命/人類が手にした第二の火――核エネルギー/原子力がエネルギー消費に占める位置/新エネルギーへの期待/太陽エネルギー/風力発電・バイオマス発電・地熱発電……/新エネルギー技術を育てる/研究の大切さ/原子力と核兵器は背中合わせ/原子力災害からあらゆる生命を守るには――よく理解して自分の意見をつくろう
もっと知りたい人への参考図書

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

白義

15
色も香りもなく、その影響がわかりにくい放射線について、化学から遺伝子学までキホンのキを教えてから自分なりに考えてもらおうというザ・啓蒙書。ジュニア新書から出ている小事典シリーズの著者チームなので内容は信頼できるもので、放射線技術の光の側面や、原発に代わる代替エネルギーの難点にも目を向け、総合的に原子力と放射能を捉えることが出来るようになっている。放射性物質としてのヨウ素やストロンチウムを考えるために、元素の周期表からしっかり土台を固めていく丁寧な書き方は派手さはないものの、この堅実さこそが最良な姿勢だろう2018/07/30

壱萬弐仟縁

6
除染。放射能は移動するのみで、とてつもなく量が減るのは時間がかかってしまう。こんなのが永続的で、肝腎の環境保全の永続性に赤信号がともっているもどかしさがある。化学の教科書に載っているような話題も豊富。より現実的な話題が書かれている。さらに読み進めると、DNAのような生物学の知識も必要とされる。巻末の参考文献も挙示されているので、意欲的な生徒はチャレンジするであろう。2013/05/28

Hiroshi

2
地球が誕生して46億年。不安定な放射性同位体は崩壊して安定同位体となり、大気により宇宙線も遮蔽され、生命に危険な放射線は減り、人類は地球上で安心して暮らしている。そんな中、人類はエネルギーを獲得する手段として原子力に目を付けた。今後人類は原子力とどのようにつき合うべきか。「原子核反応・放射線」「放射性物質も物質であり、自然界でどのような挙動をするのか」「生命に対する放射線の影響、特にDNAの損傷と修復」「公害で問題となった化学物質との比較」「エネルギー問題としての原子力」を科学的に考えていく本。難しい。2016/03/25

Humbaba

1
原子力は非常に大きなエネルギーを生み出せる.しかし,その巨大なエネルギーはいちど方向を変えた時,とてつもない災厄を引き起こす.見えず,いつ影響が発現するかわからないという不安.それは,人々の生活に暗い影を落とす.2013/04/29

takao

0
参考文献よし2016/11/05

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