内容説明
放射線は,私たちの体にどう影響するのだろう.そもそも「原子力」とはどういうエネルギーか,放射性物質はほかの物質とどう違のうか,半減期や除染の本当の意味などを,中学までに習った理科の知識をもとに,周期表やDNAの基礎からやさしく解説.中学・高校の副読本や課題図書に最適.これからどうするか,未来を考えよう!
目次
序章 東日本大震災のもたらしたもの
東北地方太平洋沖地震と大津波/原子力発電所への大地震の影響/放射性物質の飛散/ヨウ素とセシウム/除染/これからどうする?/この本について
第1章「原子力」とはどういうエネルギーか
1.原子力のエネルギーとは何だろう?
水力,石油,石炭,そして原子力/原子核からエネルギーを取り出す/不安定な原子核が放射線を出す/恒星の中,超新星爆発などで起きる原子核反応
2.放射性物質と放射線の発見
X線にはじまる放射線の発見/原子の構造の発見/α線,β線,γ線/原子の質量の不思議
3.ウランの原子核からエネルギーを取り出す
原子爆弾か原子力発電か/核分裂でできる元素/「ウランの濃縮」とは?/人類最初の原子炉/核実験と第五福竜丸の被曝
4.半減期とは?
長い期間住めない地域ができるのはなぜ?/半減期/除染は放射性同位体の移動/核廃棄物をどうする?/宇宙と地球のはなし
5.単位の話――ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)
ベクレルとグレイ/シーベルト――生体へのダメージの程度を表す/放射線の瞬間的な強さを表す
第2章 放射性物質とはどんなものか
1.元素の周期表で元素の位置を確認する
元素の周期表が物質の理解を助ける/元素の周期表ができるまで/元素の周期表と放射性同位体
2.放射性物質と元素の周期表
物質は原子のまま存在するのではない/セシウムとナトリウム――1族の仲間/ストロンチウムとカルシウム――2族の仲間/ヨウ素と塩素――17族の仲間
3.原子爆弾と原子力発電と元素
ウランとプルトニウム/原発の燃料のウラン/資源としてのウランとプルトニウム/ナトリウムは不安定な金属/水素ガスが水素爆発を起こした
4.元素の周期表と化学結合
原子の時代/イオンで存在する粒子/分子で存在する粒子
第3章 放射線は生物にどのように影響するか
1.遺伝子の本体DNAへの影響
生命の歴史と生命の尊さ/生物の特徴と放射線の影響を受ける遺伝子/染色体とDNA/染色体と遺伝子/生殖細胞と染色体/DNAの構造/DNAの複製/DNAの働き/設計図としてのDNA/DNAの修復
2.今おきていること,子孫に受け継がれること
身の回りの放射線/放射線の生体への影響/自由電子のDNAへの直接作用と間接作用/DNAが損傷するとどうなるか/DNAの修復機能/放射線量と障害の程度/確定的影響と確率的影響
3.原爆および原発事故からの教訓
広島・長崎に投下された原爆の特徴/広島・長崎に投下された原爆とがん/チェルノブイリ原発事故のヒトへの影響/東海村JCO臨界事故からの教訓
4.医療・農業・研究での利用
医療分野への利用/農作物への利用/農薬を使わない害虫駆除/人為突然変異による品種改良/検査・計測分野への応用/分子の性質を変える
第4章 どうしたら科学で身を守ることができるか
1.放射性物質はどのように飛散し濃縮するか
さまざまな化合物になっている放射性物質/気体,液体,固体の状態/放射性物質は大気から地上へ/コロイド状態にある放射性物質/コロイド粒子と除染/放射性物質の濃縮は続く/放射性物質をアボガドロ定数6.02×1023で考える/セシウムは細胞に取り込まれやすい/ストロンチウムは骨に取り込まれやすい
.コラム コロイド粒子の研究とアボガドロ定数
2.ゴミを減らす方法と放射性物質を減らす方法の違いは何か
昔はゴミを自然にもどした/ゴミを燃やして減らす/プラスチックを燃やすとダイオキシンが発生した/放射性物質を濃縮する方法と希釈する方法/放射性物質を吸着させて濃縮する方法
3.毒も薬になる,薬も毒になる
放射性物質も毒?/毒を見分ける/塩素の化合物も毒となる/殺虫剤DDTが体内に蓄積した/フロンガスによるオゾン層の破壊/水俣病を発症した水銀の体内濃縮/イタイイタイ病を発症したカドミウムの体内濃縮/水銀やカドミウムや鉛は顔料にも用いられた/放射性廃棄物も公害物質か
4.身を守るために物質の性質をもっと知ろう
現代はプラスチックの時代/からだに必要な元素とは/三大栄養素も炭素の化合物/いろいろな放射性同位体の中で生活してきた/放射性同位体と地球の年齢/放射性物質とどのようにつき合ったらよいか
終章 科学は何ができるか
放射能と生命/人類が手にした第二の火――核エネルギー/原子力がエネルギー消費に占める位置/新エネルギーへの期待/太陽エネルギー/風力発電・バイオマス発電・地熱発電……/新エネルギー技術を育てる/研究の大切さ/原子力と核兵器は背中合わせ/原子力災害からあらゆる生命を守るには――よく理解して自分の意見をつくろう
もっと知りたい人への参考図書
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