内容説明
HSP(敏感すぎる人)という言葉は,人々の生きづらさを巧みに表したことで共感をよび,広く使われている.だが,本来は心理的特性を表す考え方が独り歩きし,医療やカウンセリング,資格ビジネスやマルチ商法まで,問題のある理解や取り上げ方も多い.気鋭の心理学者が「HSPブーム」の実態を明らかにする.
目次
はじめに
第1章 HSP「ブーム」の実情
1 HSPの「発見」
2 HSPはどこから来たのか?
3 HSPという言葉の扱われ方
4 HSPブームは身近なものに
第2章 HSPブームの功罪
1 HSPはなぜ広く受け入れられたのか?
2 HSPラベルと人々との相互作用
3 ポップ化されて広まったHSP
4 偏見や差別,誤解を助長する可能性
5 HSP自認がむしろ自己理解や他者理解を狭める可能性
第3章 「消費」されるHSPブーム
1 誰がHSPブームを「消費」しているのか?
2 HSPブームの「罪」とどう付き合うか?
3 HSPに関する学術的な情報源
おわりに
引用文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
71
HSP(敏感すぎる人)という言葉の登場によって、目に見えない「生きづらさ」にHSPという名前が与えることで、安心する人々が増えた。だが、本来は心理的特性を表す考え方が独り歩きし、支援が必要な人であるにも関わらず、「これは気質(HSP)だから、病気ではない」と自己理解することで、結果的に支援につながれなかったり、医療やカウンセリングや資格ビジネス、カルトやマルチ商法の勧誘まで、様々な問題が目立つようになった。“思春期・青年期の環境感受性”を研究テーマとする心理学者が、「HSPブーム」の実態を明らかにする。⇒2023/03/15
mana
30
図書館本。こういったわかりやすい心理学的なものは流行りやすい。2025/06/18
くさてる
27
ここ数年で一気にひろまった「HSP=繊細さん」という概念に、ちょっと首をかしげていたところ、この良書に出会いました。HSPという概念の紹介と、その功罪を具体的に平易な言葉で解説しています。HSPを自認する人にとっても、否定一色ではなく、そこからつながっていく危うい商売や医療(と称するもの)への警告が丁寧に説明されているので、おすすめできる一冊です。2023/04/05
水色系
26
HSPブームにより、自らをHSPであると名乗る人が急増。本書は、そのことのおもに「罪」にフォーカスした内容。私は自分のことをあてはめると結構なHSPだと思っている。が、それで何かどうこうしようと思ったことも、何かが解決すると思ったこともない。でも実際、HSPの人が金儲けの道具みたいにされてるケースもあるんやね…。心が痛い。2023/05/06
ピンガペンギン
20
HSPについて人一倍敏感な人(繊細さん)などの説明で書籍が多く出たり、関連の民間資格がビジネスになったりしているが、学術的な定義とは異なっている。学術的には感覚処理感受性が高い人であって、「診断」されるものではない。刺激に対する反応は良いものも悪いものもある。最近出ている本では、ネガティブなことが強調されている。一部のクリニックではブームにのって根拠のない「脳波で診断」などを行っているという。注意が必要だ。心理学者が書いたHSP関連書籍はほとんどなく学術的正確さにかけるものが多い。(P79)2023/01/27




