内容説明
三年前のバイク事故で右眼を失明した警察官の尾崎冴子は、訪れた事故現場でその一部始終を目撃する。以来、尾崎の右眼は三年前の光景を映すようになった。それを知った署長の深澤は尾崎の信頼する弓削警部補と共に、未解決一家四人殺害事件の再捜査に乗り出すが――選考委員全会一致の第9回新潮ミステリー大賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
229
弓削を玉木宏、尾崎を北川景子、犯人を北村匠海のイメージで。事故のため009のフランソワーズのように見たくない光景が見えてしまう右目を持った女刑事の尾崎が、先輩の弓削らの協力を得て一家惨殺事件の謎を追う。能力を公開できないため自身で駆け回って証拠を集めねばならない苦労が、普通の警察小説にない緊迫感を生む。そこで見えてくる不気味な犯人像は、深淵を覗く時に深淵もまたこちらを覗いているとの言葉通り尾崎を追い詰める。特殊設定だが最後まで地に足がついたサスペンスが続き、犯人の虚像が崩れ去る最後の対決が見事に決まった。2023/05/22
モルク
173
交通事故で恋人を失い自らの右目を失明した警察官の尾崎冴子。3年後に現場にいくと当時の様子が見えない右目に映る。それは単なる事故ではなかった。尾崎の過去を見る能力は3年前の一家4人惨殺事件の犯人キツネをも見いだすが…。どんどん引き込まれていきページをめくる手が止まらない。尾崎をフォローする同僚弓削の存在も大きい。尾崎の特殊能力は証拠とはならないが、完璧をうたっていた犯人を追いつめていく様子はスリリングである。犯人キツネの動機は弱い気がするが、とても面白かった。続編はないのかな。2024/07/24
ma-bo
152
新潮ミステリー大賞受賞作。3年前にバイク事故で婚約者と自らの右目の視力を失ってしまった女性刑事が主人公。事故現場に訪れたタイミングで、失明した右目がその時の場面を見る事が出来てしまう様になるという特殊な設定。見る事が出来るのは遡って3年前限定、映像として本人が見えるだけなので証拠には出来ない、その能力を知るのは新たに立ち上げられた継続捜査支援刑事部別室の3人だけ等の制約があり、特殊設定が荒唐無稽に感じられない様に考えられている。未解決の一家四人殺人事件を追い一応の解決となったが続編はあるかな?2023/06/28
しんたろー
144
寺嶌曜さん初読み。新潮ミステリー大賞受賞作で読友さんの評判が良いので。交通事故で恋人を失い、右目を失明した警察官・冴子が主人公。冴子の右目に3年前を見られる能力が宿ることで、先輩刑事・弓削、キャリアの署長・深澤と3人で未解決事件を捜査する部署ができる。まずは、事故の真相を解き明かし「一家四人殺し」の犯人を追う物語に移行し、特殊能力を活かしてスリリングに展開する。3人のキャラが上手く描き分けられ、場面場面も映像的で読み易い。過去のテレビドラマで似たような設定があるのが玉に瑕だが、充分に楽しめた。続編を期待♬2024/03/29
ちょろこ
143
悔しさが伝わる一冊。事故で失明した女性刑事の右眼が過去を真実を映し出す。そんな一種の特殊能力を駆使して、未解決一家四人殺害事件の犯人を追う警察小説。自身が負ったバイク事故といい、今、目の前で殺人が行われているのに、犯人がそこにいるのに何もできない女性刑事の悔しさがこちらにまで伝染するほど。見えてきた殺人犯キツネの尻尾。なのに一気にはそれを掴めない、一歩ずつ背後から忍び寄り化けの皮を剥がす過程はもどかしさと面白さのせめぎ合い。持続、加速するドキハラ緊迫感も良い。と、同時に最大の悔しさが。キツネめ〜、めっ!2023/08/05
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