内容説明
生涯独身を貫き、人知れず青年のヌードを描いたイギリス屈指の肖像画家サージェント。身分違いの女公爵への恋文を絵に潜ませた宮廷画家ゴヤ。遺伝性疾患のために「半人半獣」と蔑まれた少女を描いたイタリアの画家フォンターナ。15年にわたり人妻と密会して描き続けたリアリズムの巨匠ワイエス……。不世出の画家たちが画布に刻みつけた、モデルとの濃厚にして深淵なる関係を読み解いた論集。(解説・諏訪敦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tulip
44
18人の画家とモデルについて各々10ページほどで語られるが、なんとも濃い内容。恋心、子への愛、同じ時代を生きる同志への尊敬、恋敵を貶めるどす黒い思い、権力者への畏れ等絵の中に画家とモデルの関係が表れる。圧倒されたのはレンピッカが自分の力でチャンスを掴み取り、這い上がっていった姿。気になったのはワイエスが15年も人妻モデルを内緒で描き続けたこと。その絵(表紙になっている)が素晴らしいだけに打ち明けられて奥様は傷ついたのでは、と思ってしまう。絵の裏側に画家の人生が渦巻いている。2023/06/14
はな
32
今回も期待裏切らず楽しめました。画家の生涯、モデルとの関係、作品の色々な角度から知る事ができ楽しかった。作品がもっと見れたらなお良い。2023/12/12
みこ
31
中野氏の絵画解説。今回は画家とモデルに焦点を当てた裏話を紹介。モデルに向けられた愛情も愛人への愛欲もあれば母から娘に向けた母性愛もある。また、愛情だけでなく権力者へ向けられた畏怖もあれば自分の姿を世間から隠すカモフラージュもあるなど、画家がモデルに向ける感情は様々。相変わらず中野氏の切り口は多彩でその引き出しの多さに驚かされる。2023/03/22
mahiro
26
絵画を鑑賞して何の予備知識もなく純粋に見て感動を覚えるのが名画だと思うが、色々な背景を知って見直すと別な面白さを発見する。この本は画家とモデルの関係から作品を読み解いている。妻、恋人、母、愛人、娘、パトロンなど様々な利害や愛憎や執着など…モデルの微笑みや大胆なポーズも意味深に感じる。しかし画家もモデルもあまり幸せになった人がいないな。モリゾの生涯と比較してレンピッカの章が印象に残る。2023/05/19
北風
14
サージェントは知らない画家だったが、検索したけど好みの絵だ。マダムX、これはシャルビューク夫人の肖像画の表紙じゃないか。それにデイジー・ミラーの表紙もこのひとだ。ネタとしては他の本とかなりかぶっているけれど、今回は画家とモデルといういつもと違う視点なのが面白い。ただ、モデルのことなのか画家のことなのかわからなくなるけど。だいたいダメ男画家だと奥さんがしっかりしている。そして女流画家は本人がしっかりしている。男も女も芸術にはミューズが必要、あるいはプラスかマイナスに振り切れてるんだな。2023/03/27