内容説明
子をはぐくむのは血ではなく愛のつながり。
1970年代に起きた「赤ちゃんあっせん事件」の真実。命を守るため不屈の闘志を燃やした産婦人科医・菊田昇の信念の物語。1926年石巻に生を受けた昇は、母が営む遊郭で育ち、女達のおかれた厳しい現実を目の当たりにする。医学部へ進み産婦人科医となった昇は、子供の命を救うため、望まぬ妊娠をした女性と、子供を望む夫婦の橋渡しを始める。それは法を犯す行為でもあった。マスコミによって明るみになり、世間を揺るがす事件へと発展。それでも命を守るという信念を曲げることなく国を相手に闘い続け、悲願の「特別養子縁組」の法律を勝ち取った。
ノンフィクションの旗手・石井光太氏が取材を重ね、「赤ちゃんあっせん事件」の裏にある真実を描いた評伝小説。解説はTBS・久保田智子さん。
※この作品は単行本版『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』として配信されていた作品の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
84
最近、僕も歳を重ねてきたせいか、我が国のいろいろな事が蓋をされて今に至り、綺麗に見せられている事に思い至る事が多い。この作品のテーマである特別養子縁組成立に至る道程や過程も同じである。当たり前が当たり前ではなかった頃の当たり前を特に若い方に学んで欲しいと思う。こういう時代が長らくあり、今に至っているのだという事。決して綺麗事しかない世の中が連綿と続いてきた訳ではない。蓋をしてはいけない経緯、今の上辺の綺麗事が出来上がった経緯というものをこうした作品から読み取って擬似体験するということは大事な事だと思う。2023/07/22
FUKUIKE
13
★★★★☆ 考えさせられながら読了。全力で生命を護ろうと闘ってこられた菊田昇医師についてもっと知りたいと思った。2024/04/03
こばゆみ
10
実在した産婦人科医・菊田昇医師の一生を描いた物語。妊娠6ヶ月以降の、既に生きていく能力を備えた新生児を中絶と称して殺してしまう行為に酷く罪悪感を覚え、特別養子縁組の法整備に奔走した菊田医師。遊郭で育った幼少期から癌でこの世を去るまで、映像を観ているような臨場感で楽しめた。そのぶんちょっとライトな感じの印象を受ける装丁が勿体ない…2023/03/20
高坂圭
5
読み終わるまでに 涙を何度、手で拭ったか、わからない。 特別養子縁組の法律を勝ち取るために 国を相手に戦った産婦人科医、菊田昇の 評伝小説だ。 主人公は遊郭の家に育ち、 女たちの悲劇を見てきた。 彼女たちを救おうと彼は産婦人科医を選び、 故郷で開業する。 しかし一番の稼ぎ口は、中絶手術だった。 ときには生きて生まれた赤ちゃんを 殺めなければいけないこともあった。 菊池は苦悩し決意する。 いやー、ほんとうの偉人というのは、 こういう方を言うんでしょうね。 10年に一度あるかないかのいい小説です。2023/03/22
だーやま
5
特別養子縁組の制度を作った実在の医師をモデルにしたフィクション。遊郭で働く女性やあの時代の女性たちは本当に生きづらかっただろうなあ。2023/02/05
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