内容説明
1976年。カリブ海に浮かぶブラックコンチ島の漁師デイヴィッドは人魚アイカイアと出会い、伝説の存在である彼女に惹かれていく。
だが、ある日島で開かれた釣り大会で、アメリカ人の親子がアイカイアを釣り上げてしまう。博物館に売り飛ばそうとする彼らから瀕死の人魚を盗み出し、自宅に匿うデイヴィッド。世話をするうち、アイカイアは少しずつ人間の姿に変化していく。
彼女は呪いで人魚に姿を変えられた、千年前の先住民族の少女だったのだ。
一緒に暮らすうちにデイヴィッドと心をかよわせ、領主やその息子と仲良くなるアイカイアだったが、獲物を奪われたアメリカ人、ひと儲けをたくらむ村人、そして永久の呪いが彼女を放っておいてくれるわけもなく──。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
54
読み終えてすぐさまグラスにラム酒を注いで飲み干した。熱くて、甘くて、じんわりと人を酔わせる。つまりこの小説の味わいそのもの。古典的な童話をカリブ海の風土と伝説に混ぜ合わせ、ポストコロニアリズムの要素を溶かし込みながら、詩的で美しい言葉によって高らかに歌い上げた快作である。とても映像的な作品でもあり、文章を読んでいるというよりは脳内で映画を観ているように錯覚する瞬間もあった。リトル・マーメイド?ディズニーは過去の名作アニメを見境なしに実写化するのではなく、こういう小説をこそ映画化するべきだ。心からそう思う。2023/01/26
コキア
2
この人魚は、人間の世界に憧れたからこっちに来た訳ではない。 何も起こらない静かな人生と、知ってしまった故の悦びと哀しみ。どっちがいい? 太古、人間だった人魚が再び地上での生活や言葉を思い出し、魂の友と出逢うとき。 疼きによる女の引き寄せの力の強さ、、 導かれた出逢い、息を飲む展開、 はあーとため息が出ちゃう何とも心揺さぶられる切ない物語 マーガレットアトウッドも絶賛だけどわたしも絶賛2023/11/11
nickkk
2
あらすじでは釣り上げられた人魚、呪い、金儲けという単語が並んでいて愛のために戦うサスペンスかと思っていたが、熱のあるラブロマンスだった。カリブ海に位置するブラックコンチ島の漁師は古代の顔立ちをした人魚に恋し、後日釣り上げられた人魚を盗む。それから人魚は徐々に人間の体になる。元人間なので手話ができ、現在の言葉も教育で覚えていく。釣果ライセンスがある限り人魚は所有物で、身体が人魚だとしたらもはや人間ではないという白人の考え方が白人的だ。絵本で書かれたおとぎ話ではなくブラックコンチで起こった出来事だと感じる。2023/05/13
Erinelly
1
そんなぁ😭という結末だったけど、まあ意外で良かった。 2023/12/07