内容説明
「これは『ナウシカ』の世界を旅する中で、すでに体験したことだ」
コロナウイルス、ウクライナ侵攻、AI問題、気候変動……混迷する現代社会を私たちはどう生きるのか。
朝日新聞デジタルにて、2021年3月に第1シーズン、5月に第2シーズンを配信し、読者から大きな反響を呼んだ「コロナ下で読み解く風の谷のナウシカ」。
2022年12月に掲載された最新の第3シーズンを加え、すべてのインタビューをまとめて刊行!
コロナウイルスをはじめ、ロシアのウクライナ侵攻、AI問題、ますます激化する気候変動など、混迷化が加速する現代社会を
「人類が方向を転換せず、破滅を経験してしまった」
仮想の未来を舞台にした宮﨑駿監督の長編漫画『風の谷のナウシカ』を通して連関的に考える。
【収録著者】民俗学者・赤坂憲雄/俳優・杏/社会哲学者・稲葉振一郎/現代史家・大木毅/社会学者・大澤真幸/漫画家・大童澄瞳/映像研究家・叶精二/作家・川上弘美/軍事アナリスト・小泉悠/英文学者・河野真太郎/ロシア文学者・佐藤雄亮/漫画研究者・杉本バウエンス・ジェシカ/文筆家・鈴木涼美/スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫/漫画家・竹宮惠子/生物学者・長沼毅/生物学者・福岡伸一/評論家・宮崎哲弥(五十音順、敬称略)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
119
宮崎駿作品では『風の谷のナウシカ』が一番好きだ。アニメ版は強引なハッピーエンドで終わるが、映画を呼び水に漫画版の壮大なドラマへ引き込まれるのだから。そこに描かれる人と技術と戦争の三つ巴という永遠のテーマから生への愛情を感じる福岡伸一や稲葉振一郎、絶望の末に希望を見い出す竹宮惠子と大木毅、ナウシカに母性の象徴を見る杏や赤坂憲雄まで、人は未来に希望を持てるのかを問いかける。ナウシカは全ての人の思いを映す巨大な鏡であり、その行動と思想に必ず反応せざるを得ない。かなわぬ夢だが生前の大江健三郎に感想を聞きたかった。2024/04/22
けんとまん1007
55
風の谷のナウシカ。映画版しか知らない。それでも、何度、観ただろうか。観る度に、発見がある。その時の自分自身の状態にもよるからだろう。それにしても、この本を読んで、漫画版を読みたくなってしまった。2023/04/20
まっと
26
名作「風の谷のナウシカ」の魅力を有名愛好家18名が自らの視点で語る一冊。その焦点は「聖母」ナウシカ本人や他の登場人物のキャラクターであったり、作品の世界観とディテール、現実世界との対比、「人間」感等々、幅広い。インタビューの聞き手も愛好家であり、双方のコメントは自分には無かった視点も数多い。フランスで宮崎作品の背景を理解するには必読、とまで言われることを知り、改めてこの作品の凄さ、深さを認識。早速映画を改めて観よう。原作漫画にも触れてみよう。その上で本書を再読すればまた新たな世界が自分の中で拡がりそうだ。2023/08/13
はるわか
13
破壊と慈悲の渾沌2023/07/11
coldsurgeon
10
漫画「風の谷のナウシカ」をもとに、インタビューから、混沌とした危機の現代社会を読み解く。映画は、調和の取れた全体に包み込まれて終わり、漫画のそれは、読者を予想もしなかった場所に投げ出して終わるという感じ。漫画ナウシカは、様々なな読み方を許容してくれる開放系の作品だろう。老いるからこそ、死ぬからこそ人は美しいと。単純な善悪では割り切れない人間の愚かさを直視する。清浄と汚濁こそ生命であり、それにまみれながら生きていくしかない。さらにある程度自然をかく乱させることが、自然界における人間の役割ではないか。2023/12/08