内容説明
一般に理解されている〈ゴータマ・ブッダは縁起を説いた〉という認識を、古層経典の精読により再検討する。
その上で、縁起説はブッダを源泉としながらもそこに仏弟子たちの知見が上書きされて打ち立てられたものであり、また初期の縁起説は「存在の相互依存関係」(網の目の譬喩)ではなく「現象の空間的関係」を説くものであるとの見解を提示する。
十二支縁起(十二因縁)に代表される縁起説の「型」の形成過程も詳しく紹介。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shin_ash
4
空って何?から、根本は縁起だと感じたので読んでみた。因縁でもなく因果でもなく「“縁”で起こる」と言う気づきが極めて現代的と感じると同時に、よくもこの様な掴みにくく理解しにくい概念を思いついたこと興味を持った。2500年前の話しで論理的とは言い難い文献しかないので限界はあるが、概ね仏教の縁起はザックリした着想からスタートし歴史を通じて因果連鎖を意味する様になった様だ。興味深いのは著者はあとがきで因果連鎖は今日では常識的なので、むしろ、分断で個別な社会を憂いて、相関(あるいは創発)的な関係を重視すべきと主張し2025/08/14
晩鳥
1
ブッダは当初、ゴータマ・シッダールタだけを指す言葉ではなかった。初期経典のブッダの語はゴータマ・シッダールタ以外のブッダの言葉も含まれている。/我々が知っている仏教はブッダの死によって始まった。/初期仏教はこの世においてどうするかという教え。/仏教の様々な思想は最初からあったのではなく、徐々に作られていった。/ブッダが悟った内容は縁起なのか? 本書では縁起を中心に仏教思想が語られている。2022/01/23
哲学者ゲリノビッチ
1
原始仏教の考えとして浸透している教えの中にはブッダ入滅後に弟子たちによって再構築されていった部分も多い。ブッダはどこまでを語ったのか…その境界線を「スッタニパータ」などの初期経典を紐解きながら探っている。後半半分は「縁起」について論じられています。しかし縁起思想を現代風に再解釈し、仏教から社会へ何かを提示しようというあとがきの部分でどうも首を捻りたくなる…2010/12/25
草令子
0
『仏教とジャイナ教という二つの宗教は、共にバラモン教の唱えた宇宙と個の根本原理を認めず、階級差別の否定、バラモン教の祭祀への批判、開祖の生涯・伝記、修行完成者の呼称、修行生活の規定、教団の構成、古層聖典の構成・内容など数多くの点で類似している。思想についても多く共通点が認められる。』2025/06/06