内容説明
靖国神社、歴史教科書、慰安婦、領土、そして「犠牲者」個人への補償。戦後七五年を超えてなお残る歴史問題。なぜ「過去」をめぐる認識は衝突し、アジア太平洋戦争の「清算」は終わらないのか。本書では、帝国の解体から東京裁判、靖国論争が始まる一九八〇年代、慰安婦や領土をめぐり周辺諸国との軋轢が増す二〇一〇年代以降の歴史問題の全容を丹念に描出。名著『国家と歴史』を改題のうえ全面改稿し、歴史和解の道筋を示す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
72
戦後の日本の「歴史問題」について、その変化と要因を丹念にたどりながら、現在の「歴史問題」の困難な状況に対し、少しでも軽善の方向性を示そうとしている。著者は保守系の立ち位置と感じるが、議論はフェアで、参考になることが多かった。連立政権がその時点の歴史問題を解決に近づけるように気のすることが多いという指摘は納得。しかし「歴史問題」自体は、外交(特に日中韓)と内政(特に日韓は選挙)が複雑に絡み合っていることも読み取れる。また、当時は曖昧にしかできなかった問題(例えば靖国神社)が、後で大きくなっていく面もあった。2023/02/17
ふみあき
46
村山政権時設立のいわゆる「アジア女性基金」のほうが、ドイツの「記憶・責任・未来」財団よりも、後者が被害者一件当たりの補償額が少額だった点、また補償を受け取って以後は提訴が禁じられていた点を考えると、よほど良心的だったように思える。たとえ思わしい結果を残せなかったとしても……。そして第一次安倍政権時に「ワシントン・ポスト」紙に掲載された意見広告「THE FACTS」が、その動機とは真逆に、むしろ従軍慰安婦問題を西側先進国に広めてしまい、結果、保守派の考える国益を損なっていたという事実は教訓的とすべきか。2023/02/21
ぴー
16
東京裁判〜安倍政権までの主な歴史問題が分かりやすく丁寧に書かれていた。個人的には、靖国に関する4章が難解と感じたが、昭和〜平成初期については、とても理解しやすかった。歴史問題を政治化させてはならないと言う筆者の思いが印象に残ったが、本当の意味で解決する日は来るのか?そもそも解決とは?など考えさせる一冊だったと感じた。参考文献も豊富に使用されており、次回は関連する本も読みたいと思いました。2024/04/14
どら猫さとっち
13
戦後から現代まで、この国の歴史問題はどのようにして向き合ってきたか。戦争責任、歴史教科書、慰安婦、領土…。さまざまな問題を抱えて、戦後は大きな時間を重ねた。しかし現在、歴史問題に大きな波紋が広がっている。本書は「国家と歴史」という題で刊行されたものを、全面改稿し、新たに世に送った。歴史問題について、よく向き合わないといけないことは、むしろ現在の政府がしてきたことが証明している。 2023/01/03
市井吉平
7
副題「「帝国」の精算から靖国、慰安婦問題まで」の通り、日本の歴史問題について、戦後どのような経緯をたどってそれらが起こってきたか叙述されている。読後のイメージは「日本の歴史問題」を考える際の基本書。現在に禍根を残す遠因は講和体制そのものにあったこと、当事国同士でも色々な積み上げがありながらそれが壊されるムーブメントが起こるなどしてきたこと。解決に至るための共通の思考は成り立つのか分からないけど、少なくとも本書に書かれていることは相手と歴史問題でやり取りする際の前提として持っておかなければならないだろう。2023/04/05
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