ソクチョの冬

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ソクチョの冬

  • ISBN:9784152102027

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内容説明

冬になると旅行客がほとんどやって来ない避暑地、ソクチョの小さな旅館でわたしは働いている。ある日、フランス人のバンドデシネ作家が旅館にやって来る。彼の中に、わたしは未だ見ぬフランス人の父と父の国への憧憬を重ねるが――。男女の一期一会を描く長篇

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chimako

72
読み心地は芥川賞作品のようだった。束草(ソクチョ)の小さな旅館で働く女性は父親がフランス人。そこにやってきたのはバンド・デシネ(漫画)作家のフランス人。リゾート地であるソクチョの冬は何もない。冷たい風と灰色の空。旅館の一部屋で作品を描く男に父を見たのか、母のように男を見たのか。起伏の無い感情はソクチョの風景と重なる。やがて、女性は恋人と別れ、バンドデシネ作家も国へ帰る。残るのは時々手に余る母親と壊れかけの旅館と自分自身。難しくとらえどころはないが決して嫌いな作品ではなかった。2023/02/28

konoha

53
装丁がかわいかったので。フレッシュな感覚にあふれている。美しく瑞々しい。ミニシアターでやってる映画みたい。ソクチョの旅館で働く主人公はフランス人のバンドデシネ作家、ケランに出会う。もっとガーリーになりそうな内容だが、文章がクール。作者はフランスと韓国のハーフで主人公と重なる。社会問題や自己の痛みへの意識も感じられる。それが根本にあるからこの小説が素晴らしいのだと思う。北欧のようなおしゃれな空気感に韓国の食材、化粧品が混じるアンバランスさが面白い。さらっと読めるが、不思議な魅力を持つ忘れがたい作品。2023/05/19

ヘラジカ

47
韓国、ソクチョの冬に出会った異邦人とのひと時の交流。恋情ではなく友情でもない。その邂逅が語り手の女性に何を齎したのかは明確ではないが、小説が終わる頃には確かにどこかが変化している。境界や対比の暗喩が随所で目に付いて、簡素で静謐な筆致ながらとても蠱惑的。多くを語らず、行間で魅せる小説だった。まさしく仏文学と韓国文学が融合したような読み心地。本国の評によると”マルグリット・デュラスが『コンビニ人間』を書いたかのような小説”とのこと。成程。確かに日本の純文学にも通じるものがあるかもしれない。2023/01/24

さくら咲く

30
著者はスイスとフランスの国籍を持つ韓国とフランスのハーフの若き女性。20近くの言語翻訳され多くの文学賞を受賞しているとの事。自らの出自と近い女性を主人公に著者自身は暮らした事の無い韓国を舞台に描かれている。アンニュイでフランスの雰囲気を纏っている印象を持った。含みを持たせた終わり方。新鮮さはあった。2023/06/08

なにょう

22
よかったです。★寒い。マイナス30度近くまで気温が下がる北朝鮮との国境の街で。宿屋で働く主人公の女の子と旅人のフランス人との交流。韓国はピカピカのソウルばかりじゃないよ。海の幸がある、山があるチムジルバンがある、韓国の地方部の生活。旅人は去る。主人公はやっぱりソウルに、あるいはどこかへ行くのか。地方に残るのか。地方に母親を残してソウルには、行けないだろうなあ。そうだよなあ。想像の余地を残す結末も良い。2025/03/08

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