内容説明
2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。
60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。
長らく忘却していた20年前の記憶――黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。
まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな〝シノギ?に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい……。
善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1108
主人公(物語の語り手でもある)の花は、これまでにも世間一般の幸福からはほど遠かったし、それは今もまたそうであり、将来もまたおそらくはそうだろう。結局のところ花が幸せだったのは、あの黄色い家で黄美子、蘭、桃子と暮らしたあの時期だけだったのである。10代で身分を保証するものは何もなく、頼る相手もいない。そんな中で犯罪と知りつつも日々の苦闘を続けていた花。この危うい生活が崩壊に向けて突き進んでいくことは、花にもわかっていた。しかし、どうすることができただろう。事柄の真相は花にも読者にもわからないのだが、⇒2023/10/01
さてさて
919
『黄色』にこだわり『黄色』を名前に含む黄美子との過去を振り返りながらコロナ禍を生きる主人公の花。そこには世紀末の世に極めて危うい橋を渡りつつ『金運』に支えられた人生を生きてきた花の姿が描かれていました。世紀末の世に『X JAPAN』が意味を持って取り上げられるこの作品。”カード犯罪”の恐ろしさとそれに関わる者たちのあまりの安易さに呆れもするこの作品。単行本608ページという圧倒的な物量にも関わらず、スピード感に溢れ、ぐいぐい読ませる川上未映子さんの筆致に、あっという間に読み切ってしまった圧巻の物語でした。2024/02/10
青乃108号
897
ずっと読んでた。花を始め、登場人物は皆親ガチャに外れ、どうしようもない人生を必死に生きていた。特に花。彼女の主観で全てが語られるのだが、彼女の、その時々の心理描写が卓越していてのめり込む様に読んだ。「怒りで体が爆発しそうだった」ありそうでなかった、こんな表現。情景描写も心理を反映していて、差し込まれるインサート場面がこれまた憎い程効果的で。何とかしようと、皆を何とかしようと必死に生きた花。壁一面黄色いペンキで塗りたくった花。でもやっぱりどうしようもなくて、皆はバラバラになったけど、それでも花は生きていく。2024/11/05
starbro
892
川上 未映子は、ご主人阿部 和重共々、新作中心に読んでいる作家です。本書は、著者の新境地でしょうか、桐野夏生ばりのシスター・ノワールの意欲作でした。600頁超ですが、ノンストップ読書で軽やかに駆け抜けました。最初黄美子が主人公かと思いましたが、花でした。 少し気が早いですが、今年のBEST20候補です。 https://www.chuko.co.jp/special/kiiroiie/ 🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨2023/03/03
パトラッシュ
842
帯に「なぜ金に狂い罪を犯すのか」とあるが、本書のヒロインたちへの答えは「勉強しなかったから」だ。生きるすべを学ぼうとせず、同じ過ちを繰り返し、犯罪すら他人に頼るしかない姿は、あまりの愚かさに嘆息したくなる。『汝、星のごとく』や『fishy』でも感じたが、なぜ日本の女性作家は貧しく惨めなのに上昇志向のないダメ女ばかり描きたがるのか。『約束のネバーランド』のエマは勇気と学びを身につけた戦う女であり、リアルでも陰謀論者の親を捨て大学に進んで成功したタラ・ウェストーバー『エデュケーション』のような例もあるのだが。2023/03/13
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