内容説明
代表曲「風に吹かれて」から60年。ノーベル文学賞を受賞した唯一のミュージシャン、ボブ・ディランは、80歳を過ぎた今なおコンサートツアーと創作活動を続けている。底知れぬエネルギーと独創性、ときに剽窃まがいと批判を受けても、なぜ彼の詞と音楽は時代もジャンルも越えて高く評価されるのか――ポピュラー音楽評論の第一人者が、数々の名曲の歴史的背景を分析、「ロック界最重要アーティスト」の本質に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
101
ディラン氏に詳しくない初心者には、彼の音楽的変遷を概観できるわかりやすい一冊だった。「風に吹かれて」「はげしい雨が降る」「戦争の親玉」などで社会に訴えたディラン氏が、「我々」から「私」へと歌の主語を変え、アコースティック・ギターをエレキに持ち替えてロックに転向して以来、この歌手への関心を失っていたのだが、その後に、また新たなイメージ転換があったことを知る。聖書や文学からの引用も多いディラン氏の歌詞が持つ深い内容やノーベル文学賞との関係にも言及してほしかったが、存命者への評論には制約があるのかもしれない。2023/04/18
けんとまん1007
50
聴いているようで、あまり、聴いてこなかったデイラン。ではあるが、存在の大きさだけは感じていた。何故なのか・・が、読み進めるうちに、解きほぐされてきた。そこにあるのは、考え続ける人としてのデイランの姿。表面的な見え方に囚われず、あくまで、伝えるべきものを伝えたい形で伝え続けること。そこが、全くブレることがないことだろう。それは、生きること、それをシンプルに続けること。ただ血が合うのは、そのシンプルにという部分の深さかなと思う。そうそう、やっぱり毎日「Like a Rolling Stone」なのだ。2024/03/02
mawaji
8
ボブ・ディランは中学生の頃から聴いていますが、人となりについては何にも知らなかったなということで手に取りました。コンパクトな新書の中にボブの音楽的基盤まとめられ、難解と思われがちなボブの発言や行動の意味が解説・考察され、とてもよく理解できました。ノーベル賞受賞式にパティ・スミスが出席した経緯やアル・クーパーがライク・ア・ローリング・ストーンに参加した逸話が特に興味深く思いました。ポールやストーンズとはまた別なプロ意識を持った現役ミュージシャン、今回の来日公演を逃したのはたいへん悔やまれます。また来るかな。2023/05/01
Copper Kettle
7
著者によると「ボブ・ディランの音楽についての入門書」とのことだけど、熱心なファン以外に手に取る人たちがいるのかやや心配、余計なお世話だろうけど。どうしても最初の彼の経歴を簡単に説明したパートが私にとっては今さら感があってページが進まなくて苦労した。だけど特にブルース・シンガーという切り口で解説した4章、ウディ・ガスリーとフランクシナトラの影響を扱った5-6章は的を射た説明で納得感ある。実はボブほどすごい歌手はいなくて、歌が上手いというのは決して譜面通りに歌うことではないというのは私も常々思っていること。2023/05/06
オールド・ボリシェビク
6
何度目かの来日が決まったから出したわけでもなかろうが、なかなかのタイミングでした。特に新味ある内容でもないのだが、「入門書」として味わえばよろしいでしょう。ディランとは何者なのか。この永遠に続く問いは、ファンがそれぞれに抱えていけばよろしい。その参考書の一つとして、読まれるべきでしょう。2023/02/21