開墾地

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開墾地

  • ISBN:9784065311684

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内容説明

何かを追いかけているのか、
それとも何かから逃げているのか。

父のルーツの言葉、母語の檻、未知なる日本語
父と息子、故郷へのそれぞれの想いが静かに共振する

留学先の日本から、サウスカロライナに帰郷したラッセル。
葛の繁茂した庭、南部ならではの湿気、耳に届く哀切な音楽――
青年は、遠くイランからこの地に根を下ろした父の来し方に想いを馳せる。

デビュー作『鴨川ランナー』で、言語と自己のはざまの揺らぎを描き、
京都文学賞を受賞。

越境文学の新たな領域をとらえる著者の、注目の最新刊。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

209
第168回芥川龍之介賞受賞作・候補作、第三弾(3/5)です。芥川賞、初の外国人作家のノミネート作ということで期待して読みました。中篇というよりも短編に近い頁数、東京、サウスカロライナ、何処でも異邦人の憂鬱の物語でした。本書の主人公に近い、イランと日本のミックスのダルビッシュ有は、アメリカでの生活をどう感じているのでしょうか? https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003748732023/02/17

キムチ

86
初読み作家。米国サウスカロライナ出身、現法政大准教授。芥川賞ノミネートという事に括目し手に取る。主人公ラッセルは帰郷し義理の父とのひと時を。彼に取り母国は米、言語は英語。だが義理の父はイラン出身で言語はペルシャ語。実母は彼らと別れ、今の空間は義理の父と。。それは妙な疎外感のあるニュアンス。国へ戻れば身内仲間とペルシャ語で語らうし、今も合間に口ずさむのはペルシャの歌。ラッセルが敢えてその言語世界の理解を求めても父はそれを望まない・・「俺の故郷は頭の中にある」と。ラッセルとの共有空間の無が彼に一方ならぬ想いを2025/07/28

いっち

77
主人公は留学先の日本から、10年ぶりにアメリカ(サウスカロライナ州)に帰省する。実家にいるのは、養子縁組を結んだ父だけ。母は主人公の小さい時に出て行った。父はイランからアメリカにやってきた。父はそれ以来アメリカにいる。開墾地だからなのか。意地のようにも感じる。主人公もアメリカから日本に渡った。主人公にとっての日本も開墾地と言える。なぜ、主人公は10年ぶりに帰って来たのか。一週間だけの帰省。理由は明言されない。日本に住み続ける決心を、父に伝えるためのような気がした。留学後も日本にいると。素朴でいい小説。2023/01/29

ケンイチミズバ

72
ノースカロライナで土地訛りの英語を話し、古い流行音楽を口ずさんだり古いビデオを見る時にペルシャ語が出て来る父。国交がなくなり故郷は心の中だけになった。日本から里帰りしたラッセルも不安定なアイデンティティをもどかしく感じる。自分がどこに根差すのか日本語で考えることが自然体に。イランに里帰りした父が戻って来れるのか心配した子供の頃の不安。ホームセンターで英語をバカにされる父の姿は前にも進まないし戻ることもできない。外来の葛のどこででも根を張り繁殖する強さと無駄だと思いながら除草を続ける父の姿の表現が上手い。2025/02/25

美紀ちゃん

71
ラストの、葛の葉っぱが家を覆い尽くすところを思い浮かべて、表紙を改めて見たら、あ、葛って蔦なんだ。と納得。 ペルシャ料理ってどんなだろう。 ケバブとか? 日本にいると気づかないことだと思うけれど、言葉の壁のようなものを感じる。 父親と他人が話すところを見てモヤモヤする主人公。 それに比べて、この文体。 なんて美しい日本語を使うのか。素晴らしい。 アメリカからきた人なのに、芥川賞の候補になった作品。 素晴らしい。2023/02/18

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