内容説明
お市の方は織田家でどのような政治的立場に置かれていたか? 浅井長政との結婚、柴田勝家との再婚の歴史的・政治的な意味とは? さらに3人の娘の動向は歴史にどう影響したのか? 史料が極めて少なく評伝も皆無に近いお市の方の生涯を、最新史料で読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
122
お市の方の名は有名だが評伝は本書が初めてとは、戦国期の女性は正確な名前や結婚に関する史料すら残されない程度の扱いだった。その僅かな史料をかき集め、信長の天下獲りに重要な役割を果たした生涯を再現する。生まれた順序の確定から夫浅井長政の履歴と朝倉、織田との関係、さらに小豆袋のエピソードに柴田勝家との再婚、二度の落城の末の最後まで文字通り政治に翻弄され続けた一生だった。娘たちを通じて豊臣と徳川の天下を左右した「こころは男子に劣るべからず」と評された女の姿は、歴史における女の役割が決して従属的ではない証しだろう。2023/04/09
きみたけ
63
「天下一の美人」と言われたお市の方の生涯と彼女の織田家における政治的地位に注目し、さらに三人の娘たちの生涯にどのように影響を及ぼしたのかを詳細に検証した一冊。著者は駿河台大学教授で日本中世史が専門の黒田基樹先生。もともと茶々について秀吉死去後の羽柴家における立場と果たした役割に注目しており、その政治的地位の源泉として母のお市の方の織田家における立場の把握のために取り組んだもの。「渓心院文」では夫浅井長政との死別が悔しかったこと、「柴田合戦記」では「こころは男子に劣るべからず」と発言した背景に迫ります。2023/06/08
bapaksejahtera
21
近世初期の戦国大名を中心とする一般向けの本だが、テーマ性を失わず、かつ手を抜かない点で著者の本は好感が持てる。天下一の美人、お市の方の評伝。かく下司な関心を持ち読み始めたが、その評価の多くは江戸期もかなり後に成立した物。彼女に関する確実な史料は極めて乏しい。後に自身の三人娘の立身を因として広まった話の由。歴史の賽の振りようで、彼女も大名朝倉家の国衆の一人に過ぎない浅井の夫人に終わったのかも知れない。兎も角、家政に力を発揮する戦国の夫人たちの役割の大きさを、今日的な夫婦関係を基に推量せぬよう諭しつつ論証する2024/01/06
ようはん
20
同じ黒田先生の著書である「家康の正妻 築山殿」でも書かれていたが戦国時代の女性はとにかく当時の資料には出る事はあまり無く、それはお市の方も同様になる。後世にて戦国一の美女とかのイメージが定着したが、読んでみては長政に殉じる事が出来なかった悔恨、秀吉の勢力拡大の中で信長の法要を行った事など武家の妻として誇りを貫いた人という印象になる。2023/07/27
nagoyan
20
優。戦国一有名だが実態不明な「お市の方」。信秀の娘は何人かさえ不明。著者は、確実視できる4人の中で、お市は末の娘と考える。お市が浅井家に嫁したのは、信長の美濃併呑、上洛戦直前の永禄十年とされ、浅井氏側からの働きかけによる。当時、国衆浅井氏は六角氏への対抗上、越前朝倉家に従属。濃尾の戦国大名信長へは両属関係になった。お市は浅井氏滅亡後、信長叔父、信長母の庇護下。本能寺後、織田家との親族関係を欲する勝家に嫁す。勝家領国に秀吉の長浜が移されたのは、「小谷殿」お市の存在が。勝家と最後を共にした彼女の個性なのか。2023/01/21