内容説明
家内あっての自分だった。一人きりで迎える静かな時間の中で、とめどなく蘇る君在りし頃の思い出。手料理の味、忘れられない旅、おしゃれ、愛した猫や思い出の映画……。夫婦二人だけで過ごした35年間のささやかな日常には、常に君がいてくれた。いい時も悪い時も、7歳下の美しく、明るく、聡明な君が――。文芸・映画評論でつとに知られる著者が綴る、亡き妻へ捧げる感涙の追想記。(「別れ」という重たい代償・西川美和、解説・佐久間文子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
107
6年前に読んでの再読。奥さまの57歳の死は、あまりにも早すぎます。無情な癌宣告を受けて、ご夫妻で癌に立ち向かう必死の姿に心を打たれました。最期を看取るくだりを読むのは、今回も悲しみがこみ上げてきて、とても辛かった。 「もっと優しうしといてやりゃあよかった」―奥さまに対する川本三郎さんの気持ちのすべてが込められた、素敵な言葉だと思います。2019/09/05
はつばあば
37
雪景色が広がる今朝、新聞と共に新聞受けに入っていたこの本。早朝に「イスラム国」が行った後藤さんへの非道なるニュース。合掌。赤い糸で結ばれた夫婦の永遠の離別。うちの爺様は作者と同じ年にも関わらず頭が堅い。おかずが多いから始まってオシャレにも無頓着。おだてながら38年。今ではお互いが戦友でもあり必要不可欠な存在。時間とは無情なものだ。私達夫婦もどちらが先に逝くか分らない。母と爺様を見届けたら・・「49日が済んだら迎えに来てね、来世もよろしく」と頼んでいるが、爺様「来世は違う人がいい」と。私には一人暮らしは辛い2015/02/01
シブ吉
24
7歳年下の奥さんに先立たれた川本三郎さんの、奥さんへの想いを綴った一冊。川本さんの文章からにじみ出る奥さんの人間像が素敵なだけに、後半に進むにつれて胸が苦しくなり、特に、「幸せだった思い出を語るのが、いちばんうれしいことではないか」の章では、個人的に身につまされました。随所に出てくる映画や漫画のセリフ。同じ境遇となった川本さんの心をより一層締め付けたことでしょう。奥さんとの運命の出会いから一緒に過ごした日々を読みながら、深い愛を感じさせられ、連れ添った時間がとても幸せだったと思いました。2012/11/03
Gatsby
22
川本氏の亡くなられた奥様に関するエッセイだが、奥様が7歳下であるということがうちの夫婦と同じなので、つい感情移入して読んでしまった。いろいろなエピソードが散りばめられていて、その一つ一つに奥様に対する、そして奥様からの深い愛情が感じられる。あまりウェットになりすぎないように、努めて淡々とした語り口になってはいるが、「こんなことなら、生きとるうちに、もっと優しうしといてやりゃあよかったと思いますよ」という小津の『東京物語』からの引用に思わず涙がこぼれた。映画の笠智衆と川本氏のイメージが重なって見えた。2012/11/24
かもめ
14
素敵な奥様を失った寂しさが良く解る。生前ご夫妻であちこちお出かけになり沢山の思い出があり、とても幸せそう。奥様はいつまでも、川本三郎先生の心の中で生きているだろう。2019/05/15