内容説明
土佐の上級武士の家に生まれながら、子供の頃は「土佐一の悪童」。志士たちが躍動をはじめた青年期も「時勢に興味なし」と嘯いていた板垣退助。しかし、「あること」がきっかけで佐幕派である主君・山内容堂の意に反し、「幕府などいらん」と豪語、民のための政治を志していく。「板垣死すとも自由は死せず」の一言で有名な政治家・板垣退助の生涯を通して幕末維新の激動を描いた大河小説。直木賞作家にして歴史小説界のトップランナーが描いた「日本の民主主義の始祖」の物語、ついに文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みこ
19
板垣退助を主人公とした長編小説。前半は会津戦争の途中まででやや中途半端に終わった印象。幕末を土佐の上士の目線で描いた作品って読んだことが無かったので何だか新鮮な気持ち。天狗党や勤王党など立場はかけ離れているのに思想が近い人間の群れに興味を惹かれる様は後編での自由党結成の伏線となるのだろうか。板垣&後藤のW主演で大河が作られても良いかもと思った。2023/03/01
春風
12
板垣退助という小説の主人公には向きそうにない人物を取り上げた野心作。上巻は戊辰役が始まるころまで。本書の文体は、前半がとりわけ司馬遼太郎を意識したもので、司馬独特の体言止めなどを多用しており、リズム感はまさにそのもの。滑稽みと洞察力の欠けるモノマネ文体としかいいようがなかった。あの文体だから、読みやすくはあるのだが。上巻後半くらいからはやや文体が変わってきており、戦争シーンなどは著者の地の文になってきた印象。文体が落ち着いてきたところで、下巻で自由民権運動家としての板垣がどのように描かれるか期待がかかる。2023/01/29
ツバサ
10
板垣退助、名前は知っていたが、生涯については知らなかったので気になって読みました。小さな頃の破天荒さには驚いたが、行動力、知恵には下を巻きました。下巻も読みます。2023/01/13
熱東風(あちこち)
4
内容云々よりも文体に驚いた。もろに司馬遼太郎そのものだ。門井氏の作品は過去に何作か読んだことはあるが、そんな印象はなかった。まぁだからと言って猿真似とは言わないが。リスペクトだろう。/そういう文体なので読みやすいことは読みやすいのだが、内容的にはどうも今一つ板垣の内面が見づらい。/板垣退助を描いたのでは過去に三好徹『孤雲去りて』を読んだことがある。細かい内容は忘れたが、大河ドラマで斎藤洋介が演じていた、どこか間の抜けた印象のキャラとは大違いで、凄みがある人物なのかということだけは覚えている。2023/11/06
のりさん
2
本文中にもあったが平和な時には奇人として人生を終えてしまうような型破りな人間こそ、幕末という激動の時代では輝きを放つのだな。土佐の上層部の幕末視点はとても新鮮で面白かった。 余談ではあるけれど、昔読んだ「お~い竜馬」という漫画では山内容堂がとんでもないバカ殿に描かれていて長い間自分の中でそのイメージが固定されていた。 実際は思想は違えど幕末の政治に尽力した人物であり、あれ程バカ殿で描いていた事に凄く悪意を感じてしまう。2023/11/05