ちくま学芸文庫<br> 病気と治療の文化人類学

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ちくま学芸文庫
病気と治療の文化人類学

  • 著者名:波平恵美子【著者】
  • 価格 ¥1,155(本体¥1,050)
  • 筑摩書房(2023/01発売)
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  • ISBN:9784480511522

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内容説明

どれほど科学技術が発達しようと治らない病気はある。だからこそ人間は病気に強い関心を抱き、さまざまな意味づけを行ってきた。民俗医療や治療儀礼、宗教・民間信仰・シャーマニズムは、どのように病気とかかわってきたのか。本書では「病マケ」と呼ばれる家筋への差別構造、奄美のユタによる治療実態、明治期のコレラが引き起こした社会的混乱など、豊富で多様な民族誌的事例も踏まえつつ、文化と社会における病気に焦点をあて、総合的な文化人類学理論を構築しようとする。「医療人類学」を切り拓いてきた著者による先駆的名著。

目次

序/第一章 病気の意味づけ/病気のシンボリズム/病因論(病原論と病因論)/治療法/「病気」の規準──「病気」とはどういう状態を指すのか/病気の分類/薬/豊かに意味づけられた病気/第二章 病気と信仰/第一節 病気・治療・信仰//信仰と治療/負の表象としての病気/ユタとクライアント/狂気と社会//第二節 妖術と邪術//社会構造・社会的機能/説明の体系としての妖術・邪術//第三節 シャーマニズム//シャーマンと病苦/召命シャーマンと習得シャーマン/巫病の特徴/シャーマンの性的両義性/シャーマニズムと霊魂観および治療儀礼/シャーマニズムにおける世界観/シャーマンの成巫式における死と再生観念/シャーマニズムにおける病気治療と病人/第三章 病気と社会/第一節 「病マケ」──病気の社会的意味づけの一事例/差別の契機としての病気/時代を代表する病気/病マケの背景//第二節 コレラ流行とその社会的混乱//流行病/明治期のコレラと行政/医師あるいは治療に対する誤解と偏見/病気による「家の印づけ」/医療体系の混乱//第三節 新潟県鱒谷ムラにおける病気治療の状況/第四章 伝統的社会における医療体系/第一節 江戸時代の痘瘡治療に見られる医療体系//種子島における痘瘡治療/馬琴日記//第二節 奄美のユタ//ユタとトランス(エクスタシー)/ユタ治療の現状/ユタ信仰における「病気」の意味/ユタ治療の背景/第三節 「いのれ・くすれ」──四国・谷の木ムラの信仰と医療体系/「サワリ」の病気/生霊のツキ/祖霊のタタリとツキ/カミのタタリ/谷の木ムラの信仰と医療/タタリ・ツキ信仰の社会的機能/祈兊師の役割/谷の木ムラの疾病観/伝統的社会におけるツキモノ信仰/第五章 病気と治療の文化人類学/医療人類学/「文化的疾病」と「病理学的疾病」について/現代医学と伝統的医療との関係/医療体系とその下位体系/医療人類学の研究上の問題/結語/引用文献/参考文献/文庫版著者あとがき/文庫版解説 パイオニアの凄み 浜田明範/索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キムチ27

47
文化人類学という、学際的色の濃いジャンル。初めて触れた気がしない。というのも石牟礼、森田正篤、レヴィ・ストラースなど既知の論説が紹介されていた為。40年前発刊の文庫化とあって加筆修正との後書き。筆者がこの分野のパイオニアながら現役であることは素晴らしい。現代医学をもってしても尚みられる伝統医療、呪術、ユタ、シャーマン等の在り様は消滅どころか、新たなニーズもを増えている。病罹患した人々の懊悩に寄り添い答えを齎すことで人生を豊穣な輝きへ導くこともあり得る・・と。人間がいかに文化的な生物であるかを再認識させたの2024/02/14

さとうしん

17
文化人類学の下位分野としての医療人類学の入門書ということだが、「病気と信仰」は文化人類学自体の中心ともなり得るテーマではないかと感じた。紹介されている事例は日本のものが中心だが、祈禱による治療は現代医療を必ずしも排除せず、むしろ二人三脚のような態勢をとることが多いというのは面白い。また明治政府による科学的・合理的なコレラ対策が、その種の知識な乏しい人に患者への差別行動を促したというのは、新型コロナウィルス対策の良い教訓となるだろうと感じた。2022/11/23

やんも

6
ユタ、タユウ、憑き物筋、そんな単語にピンときた方にはお勧め。時代は遡るが著者が参加した実地調査などに基づく論考はとても興味深い。 そのほか、過去の流行病患者の強制隔離治療に関する当時の人々の反応などにもふれている。参考資料の一覧も充実の一冊。2023/02/17

rune

6
本書で扱われる事例は時空間においても症例においても多岐にわたるが、それらを貫いて問われるのは、それぞれの社会において病気がいかに意味づけられているか、である。西洋医学は人が「どのように」病気にかかるかをかなりの程度まで明らかにしてきた。しかし、「なぜ」病気にかかるかを説明してはくれない。なぜ、よりによってこの人が——。そう問わずにはいられない人間の習性が、多様な「病気の意味づけ」を生み出してきた。何が原因か(病原論・病因論)、どう治療するか、そもそも病気とはどういう状態を指すのか。2022/11/19

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