内容説明
大手製菓会社勤務のタへ、ウンサン、チソン。20代後半、独身、経済的余裕がなくワンルームで一人暮らし、と共通点が多い。ある時、ウンサンが仮想通貨投資を始め、面白いように儲かるという。当初懐疑的だったタへとチソンも投資を始め、3人は通貨価格のアップダウンに一喜一憂しながら、自らの人生を見つめていくことになるが――厳しい時代を生きる若者たちの、切実ながらも逞しい姿を描いた韓国の“ハイパーリアリズム”小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
21
「チソンは二億四千万ウォンを稼いだ。私は三億二千万ウォンを稼いだ。ウンサンオン二は三十三億ウォンを稼いだ。私にはこれらすべてのことが、二〇一七年五月から、二〇一八年一月までの、たった八か月のあいだに起きたのだった。」 ウォンが円の十倍の価値だったとしても、この金額は凄い。一介の会社員が短期間で稼げる額ではない。きっとウラがあるのでは?その答えは、仮想通貨・イーサリアムだ。タへ、チソン、ウンサンはソウルのマロン製菓で働いている。2023/03/03
BECHA☆
9
同時期にマロン製菓に途中入社した三人の女子が上がらない給料と厳しい生活(多額の奨学金返済)打破のために仮想通貨にチャレンジする話。社内事情がどこも変わらないなぁだったり、住宅事情はより厳しそうだったり、グラフの上下にこちらもハラハラドキドキ引きずり込まれました。2023/06/18
ほんメモ(S.U.)
7
とにかく楽しく読める一冊でした!仮想通貨イーサリアム投資を『冒険』に仕上げた物語。ソウルで働く20代〜30代の女性達の、葛藤、不安、焦り、後悔、夢、希望…様々な感情が、仮想通貨の変動とともにアップダウンしていく様が、読んでいてとても面白かったし、ドキドキハラハラ、ワクワクさせてもらえました。疾走感のある生き生きとした語り口も良かったですし、注釈も工夫されていて、翻訳もすごく読みやすかったです。3人の女性達の今後の人生がどんな風に展開していくのかも気になるので、今後続編があったら是非読みたいなと思いました。2024/05/28
macco
6
主人公含め同じ会社の3人のしがないOLが仮想通貨で「月まで行こう」とお金を稼ぐ話。面白くてテンポよく読み進められた。急騰と下落を繰り返すチャート、こんなん心臓バクバクだろうな〜!韓国でも日本でも、生まれつき恵まれていない人間の環境って似たようなもんなんだなって思った。狭いワンルームでのストレスとか、意味わからないおじさん上司とか、いつもお金に関しての漠然とした不安とか…めっちゃわかるよ。リアリティあってよかった。今作が初の長編らしいので、次回作も楽しみ。2023/03/20
鹿ノ子
5
まさに現代のプロレタリア文学っていう感じ。いにしえのプロレタリア文学とは違い、とても痛快な物語で、楽しく読めました。「金のスプーン」を持って生まれた者と「泥のスプーン」を持って生まれた者の格差は永遠に埋まらないような気がして、ともすれば絶望感しかない世の中ですが、崖っぷちから這いあがろうとあがき続ける彼女たちは羨ましいほどかっこよかったです!2024/07/04