内容説明
二・二六事件を頂点とする「昭和維新運動」の推進力であった「青年将校グループ」とは、どのような人たちだったのか。彼らはなぜ二・二六事件を起こさねばならなかったのか――。グループの中心人物であった著者が、自身の体験したことを客観的に綴る本書は、貴重な昭和史第一級史料であるとともに、三島由紀夫に「見事な洗煉された文章」として激賞されたことでも知られる。長年読み継がれてきた名著に、拾遺八篇と同時代書評を増補した決定版。〈解説〉筒井清忠
「私の人生の本」といえば、この本をあげなければなるまい――三島由紀夫
昭和維新運動の全体像を構築するためにも、私に非常に多くのことを教えてくれる――橋川文三
【目 次】
まえがき
Ⅰ
残 生/大岸頼好との出合い
Ⅱ
天剣党以来/十月事件の体験/出征から凱旋まで/十一月二十日事件(その一)/十一月二十日事件(その二)/十一月二十日事件(その三)/相沢事件の前後(その一)/相沢事件の前後(その二)/相沢事件の前後(その三)/相沢事件の前後(その四)/蹶起の前後(その一)/蹶起の前後(その二)/青雲の涯
Ⅲ
大岸頼好の死
拾 遺
赤化将校事件/青森連隊の呼応計画/刑場の写真/夏草の蒸すころ/続・夏草の蒸すころ/素描・竹橋事件/有馬頼義の『二・二六暗殺の目撃者』について/映画「脱出」について
付録……同時代書評(*は電子には未収録)
利用とあこがれ……三島由紀夫(*)
人生の本―末松太平著「私の昭和史」……三島由紀夫(*)
末松太平著『私の昭和史』について……橋川文三
〈解説〉筒井清忠
索 引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
106
226事件関係書中の白眉。蹶起した青年将校と親しかった著者が描き出す、事件までの生々しい関係者の動きや心情は息苦しいほどだ。国からの金目当てに戦死した兵の遺骨を親族が奪い合う極貧下で、若い軍人は北一輝らの影響もあり維新思想に心奪われていく。それを抑圧する軍上層部との軋轢が生んだ永田軍務局長斬殺事件の前に、実行犯の相沢中佐から相談を受ける場面は陸軍内の重苦しい空気が漂ってくる。それでも天皇への忠義に囚われた彼らは、暴力による国家革新へ突き進んでいく。戦後日本に絶望していた三島由紀夫が深く共感したのも当然か。2023/04/04
Ohe Hiroyuki
4
二・二六事件において検挙され、有罪判決を受け、免官となった青年将校が記した書籍である。▼本書は、三島由紀夫をして「ここ十年ほどの間で、もっとも感銘を受けた「私の人生の本」」であるといわしめした本である。▼内容は分厚く、名前もたくさん出てくるので、読み進めるのには時間がかかるが、完読して感じるものが大いにある本である。▼本書を全体を通読すると二・二六事件の源流は、どうやら明治初期の軍政にありそうである。▼二・二六事件は突発的に起きたものではなく、当時の多くの人にとって「起こりそうなこと」であったように思える2023/06/18