内容説明
昭和・平成のミステリの技法をフル装備し、
乱歩デビュー前の大正時代半ばに転生して本格探偵小説を書いたら……。
そんな夢想が現実のものになったかのような極上の逸品。
この作者は、令和のミステリを支える
太い柱の一つになるだろう。
有栖川有栖
大正の東京。
秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる
血液学研究の大家・村山博士が刺殺された。
不可解な点は3つ。遺体が移動させられていたこと、
鞄の内側がべっとり血に濡れていたこと、そして、
遺族が解決を依頼したのが以前村山邸に盗みに入った元泥棒だったこと――。
頭脳明晰にして見目麗しく、厭世家の元泥棒・蓮野が見つけた
四人の容疑者の共通点は、“事件解決に熱心過ぎる”ことだった――。
『方舟』が各界から激賞されたミステリー作家、衝撃のデビュー作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
174
謎の解明が主眼の本格ミステリは具象画でなければ意味不明だが、力が入りすぎて抽象画になってしまった。無政府主義の秘密結社が絡む殺人事件と現実離れした名探偵、当時の最新医学に謎めいた過去の因縁など山盛りの素材を、チェスタトン流の逆説とカー風ドタバタ劇で解明するドラマを追求したのだから。あまりに詰め込みすぎて、水彩絵具で全色を混ぜ合わせて灰色になるのと同じ結果を招いた。『方舟』で色や構図を絞ってわかりやすい絵に仕上げたのは、趣味性の高い狭い読者層だけを相手にせず広く読まれる作家になるため必要と悟ったからなのか。2023/05/18
佐藤(Sato19601027)
129
蓮野と井口が探偵と助手役として活躍する夕木先生のデビュー作。蓮野は元泥棒で、自分の推理が間違っていても責任を負わないような探偵は出来ないとの考えを持つ美青年だが、帝国大学出の頭の良さと、人物を的確に見抜く能力、語学に堪能であることなどを見込まれて、探偵の依頼をされるという設定だ。時は第一次大戦後の大正九年で、無政府主義者や秘密結社「絞首商會」、特高警察などが登場して、大正時代の香りが漂う探偵小説に仕上がっている。殺害動機の謎や伏線の回収など、どこを切り取ってももうお見事。(第60回メフィスト賞受賞作)2024/06/21
ちょろこ
126
なぜ?が面白い一冊。元泥棒の蓮野と画家の井口が駆け回る大正時代推理劇。分厚さも何のその。殺人事件解決の探偵役にご指名された元泥棒という、そんなスタートから面白い。しかも時系列として「時計泥棒…」の後だとわかり順番的にも良かった。犯人は一体誰?ゆっくり真相を追い求める過程は静と動の緩急が有り飽きない。そして細かな笑いが仕込んであるのがたまらない。この二人、本当にナイスコンビ。今回は女性陣も良かった。真相という頂点へ向けての小さななぜ?の集合体は大正時代を程よく効かせ、大きな納得を運ぶ気持ちよさで面白かった。2024/02/28
とん大西
125
思わず衝動買い。精巧なロジックは手練れの如く。ただ「方舟」の完成度と比べるとやや詰込過ぎ感はあるかも。大正の頃の東京。ある朝、自宅庭で発見された医学博士・村山鼓堂の刺殺体。浮かび上がる容疑者、そして暗躍する絞首商會の謎。大戦と大戦に挟まれた不穏な時代ならではの設定。探偵役に駆り出されたのは頭脳明晰で品行方正な元泥棒・蓮野。ラスト数十頁で根こそぎ回収する鮮やかさ。『もしかして』と疑念を抱いた伏線が真相と繋がってたあたりは溜飲が下がる思い。長いかぁ~とは思いますが、予想の上をいく真相と王道の読み味に満足です。2023/03/25
toshi
86
2019年のデビュー作で、メフィスト賞受賞作。キワモノ(?)のメフィスト賞には珍しく、本格推理を追及した正統派ミステリーとなってます。舞台は大正時代の東京。ある博士が殺されているのが分かり、容疑者4人に疑いがかかります。そしてその裏には謎の組織、絞首商会が暗躍していることが分かります。メインの登場人物が少ない割に、緊張感を保った内容になっており、570ページを超える分量も中弛みしません。特に犯人の動機には驚きました。続編があれば読みたいと思いました。今度は傑作の名高い「方舟」を読んでみようかと思います。2025/06/15
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