内容説明
初の「百貨店ゼロ県」山形。現地在住の著者が取材と調査を基に、その一部始終を追ったノンフィクション。
「うそだよね。大沼がなくなるなんて」
2020年1月27日、山形の老舗デパート「大沼」が突然、自己破産を発表した。
約200人の従業員は即日解雇。「全国初の百貨店ゼロ県」とも報じられた。
本書では、大沼の生きた320年をたどりながら、繁栄と終焉の内側を描く。
著者は山形で事業を営み、大沼デパートとも取引をしていた。
取材に応じたのは、破産を決定した社長や解雇された従業員、ライバル店の幹部など。
さまざまな関係者の証言と、膨大な資料で構成したノンフィクション。
【著者】
渡辺大輔
1980年山形県生まれ。大阪芸術大学文芸学科中退。山形市小姓町に存在した遊郭や、キャバレーを題材にした書籍をそれぞれ出版。
目次
開戦:「商い」という戦いの始まり
全滅:明治維新の皮肉
鬼:嫌われた英雄
黒い雲:光明としての勧工場
花が咲く:日露戦争に散った者たち
炎上:街がみんな燃える
成る:待望のデパート誕生
挫折:のしかかる太平洋戦争
双頭:2大デパート「大沼」「丸久」
旅せよ日本:観光ブームの裏側
摩擦:中小商店との軋轢
新興:駅前の覚醒
激突:スーパーマーケット来襲
事件:大型店戦争
灰から灰へ:大沼デパートの焼失
炎は消える:昭和に消えた男たち
脱落:平成の大穴
家族:震災の宣告
さよならデパート:老舗看板の崩落
日曜日:今日、全て終わる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
56
山形の大沼デパートへの思いを込めた物語。史実、取材をもとにした作品です。私自身は、山形には縁がなく、大沼デパートをはじめとする地元密着のデパートの名前も知りません。それでもデパートという場所への思いは強いせいか、この衰退の物語は、ノスタルジーを駆り立てるばかりではなく、日本の構造変化を感じさせます。デパートのにぎわいや出かける時のよそ行きの服など、ささやかながら幸福に満ちた季節だったと思います。2022/06/30
ちょーのすけ
4
ここ3年ほどの間に10回以上山形市を訪ねて、駅から七日町あたりなら地図がなくても行きたいところへ行けるようになっている。そして山形の商店街の盛衰を追ったこんな本を読むようにまで山形に馴染んだ。まだ営業していた大沼百貨店の前も1度歩いているし、ダイワロイネットになっている場所はかつて十字屋で、山交ビルはダイエー、そんなに多くの大規模施設があったのかと驚く。僕の住む町からも、大和百貨店、ユニー、ジャスコ、ダイエー、みんな消えたので、地方都市はどこも同じだね。切なくて悲しくて懐かしくて。2023/02/03
Eri Hosoya
4
まさか駒姫処刑シーンから始まるとは,,,初めからすべて書く、のは大変だったと思いますが、残してくれてありがとう、という気持ちです。 街の、知っているあの店、あの人が出てくるのが楽しい。郷土史の楽しさ,,,2022/07/08
らんどるる
3
図書館本。山形のデパートの歴史のようなもの。地元の人なら思い入れもあるのだろう。山形ならでは、のことが書かれているが、長崎屋、十字屋、ジャスコ、ダイエー、イオン等も出てきて、山形に限らず、流通業界の歴史でもあるようなところも。栄枯盛衰。今の状態もまた変わっていくのだろうなぁと思わせられた。2024/08/28
眼鏡堂書店
3
時代の変遷に伴う商業形態の変化や消費者の嗜好の変化に振り回された百貨店や駅前商店街、スーパーの悲喜こもごも。正直、後半の倒産寸前の模様が最も面白い。残酷なようだが、百貨店や商店街がなくても人間は特に不自由なく生活できるのだ。特にこのご時世では。2022/06/29
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