内容説明
「ずっとそんなふうに自分を苦しめたままでいることはできないよ──」
生きることへの深い洞察とリアリズムの融合した英国小説の真髄、新訳で登場。
【作品のあらすじ】
19世紀、大英帝国として栄華を極める前夜のイギリス田園地帯。製粉と酒造を生業とするタリヴァー家で、個性豊かな少女マギーは父と母、そして誰よりも愛する兄トムと暮らしていた。しかし穏やかで牧歌的な生活は、裁判敗訴をきっかけにした父の死により一変してしまう。父の怨敵に激烈な復讐心を燃やす兄。マギーは宿敵の息子フィリップから激しく純粋な恋情を向けられ、その心に応えたいと願いながらも、しかし兄との絆を断ち切ることはできない。追い打ちをかけるようにマギーの心は、いとこルーシーと婚約寸前の恋人スティーヴンとの狂おしい愛に揺れ動く。人として生きるのなら過去の絆を断ち切るわけにはいかない──少女マギーの葛藤が英国社会の日常を背景に辿られ、当時の知性と現実を描き出す英国小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
115
英国中流地主家庭の没落と再興、一家の奮闘と恋の物語。水車場を所有していたタリヴァー氏が訴訟に敗れて破産宣告を受ける。その息子トムが再興を目指す一方で妹のマギーが訴訟の勝者である相手方の息子のフィリップと恋仲になるも、新たに現れた好青年スティーヴンに愛の告白を受けて苦しむ。ところが物語はほとんど唐突に悲劇で終わる。「え、どういうこっちゃ」感の強い終局。この終わり方に発表以来、種々疑問が投げかけられているようであるが、折角の「名作的」充実感のある内容だっただけに残念な終わり方だった。G505/1000。 2024/05/08
ソングライン
23
フロム河畔で製粉業を営む裕福な家庭に暮らすトムとマギーの兄妹、しかし父が水利権の訴訟に負け、財産を奪われ没落、失意のうちに亡くなります。裁判の相手ウェイカムに復讐を誓うトムと幼い時の負傷により背骨の曲がるも優れた英知を持つウェイカムの息子フィリップを慕うマギー。大人になったマギーに魅かれる従妹ルーシーの婚約者スティーブンの許されない求婚に悩むマギー。人は自分の愛、富のために大切な人への思いやり、記憶を犠牲にしてよいのか。悩むマギーに訪れる余りにも悲しい平穏、ジョージ・エリオットの傑作にただ感動です。2023/05/10
Э0!P!
3
ジョージ・エリオットのおそらく一番の傑作と思われる。ユリシーズ的なストーリーで神話的なのだが、マギーという優秀な女性が、家父長制ゴリゴリのヨーロッパにおいて個人の解放を目指すという点で近代を感じる。シェークスピアを思わせる愛憎劇、身体障害者の苦悩、巨大質量で押し寄せる自然の脅威と要素てんこ盛りであり、うねるような激流の中に迸る感情の渦がこれ以上になく丁寧に描写されている。2024/01/24
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