内容説明
奇跡のアンソロジー、日韓同時刊行!
突如若者に舞い降りた「無」ブーム。世界各地に「無街」が建設され――。
(村田沙耶香「無」)
夫がさりげなく口にした同級生の名前、妻は何かを感じとった。
(アルフィアン・サアット「妻」/藤井光・訳)
ポジティブシティでは、人間の感情とともに建物が色を変える。
(ハオ・ジンファン「ポジティブレンガ」/大久保洋子・訳)
先鋭化する民主化運動の傍らで生きる「あなた」たちの物語。
(ウィワット・ルートウィワットウォンサー「燃える」/福冨渉・訳)
都市に走った亀裂、浸透する秘密警察、押し黙る人びと。
(韓麗珠「秘密警察」/及川茜・訳)
ブラック職場を去ることにした僕。頭を過るのは死んだ幼馴染の言葉だった。
(ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」/星泉・訳)
家族の「縁」から逃れることを望んできた母が、死を目前にして思うこと。
(グエン・ゴック・トゥ「逃避」/野平宗弘・訳)
3人の少年には卓球の練習後に集う、秘密の場所がある。
(連明偉「シェリスおばさんのアフタヌーンティー/及川茜・訳)
6人の放送作家に手を出した男への処罰は不当か否か。
(チョン・セラン「絶縁」/吉川凪・訳)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
219
村田 沙耶香は、新作をコンスタントにに読んでいる作家です。著者を含むアジア9都市9人の作家たちのアンソロジー、興味深く読みました。オススメは、村田 沙耶香『無』&郝 景芳『ポジティブレンガ』&韓 麗珠『秘密警察』です。 https://www.shogakukan.co.jp/books/09356745 2023/02/09
藤月はな(灯れ松明の火)
57
村田沙耶香さんの作品は実は初。「無」の気持ち悪いからこそ、人には話せない自分の心にいる感情を言語化している事に良くも悪くも心を鷲掴みにされた。流行すると皆一気にその色に染まる薄気味悪さを東京タワーからの電波によるものだと信じる「母」美代。そして「無」になろうとしてなれなかった「娘」奈々子。本当は皆と一緒に倣えるものが欲しかっただけのに自分が倣われる身になった美代に対し、奈々子が「化け物だと思い出したかった」という場面が残酷だ。美代にとって母性を抱かせてくれなかった癖に愛情を捨てた奈々子の方が化け物だった。2024/05/18
kei302
55
アジアの若手世代の作家たちが同じテーマ「絶縁」のもと短編を書いたアンソロジー。人間の多面性を“ポジティブ”面で覆う“ポジティブシティ”の内部崩壊を描いたハオ・ジンファン「ポジティブレンガ」が面白かった。表題作チョン・セラン「絶縁」は業界内で声を上げ始めた人々から提示された社会問題を扱っている点が読みやすく、希望が見えるラストだった。村田沙耶香「無」東京タワーから感情や母性が送信されてくると思うと、ちょっと怖い。2022/12/19
けぴ
48
アジア作家による短編集。日本からは村田沙耶香『無』。彼女らしい切れ味の作品。感情により身の回りの色が変わる『ポジティブレンガ』が面白かった。このほか『秘密警察』『絶縁』を読んだが、後の作品は未読。2023/09/23
空猫
37
アジアの女流作家だけのアンソロジー。『中国・アメリカ 謎SF』の純文学版?フェミニズム版?本書も日本では未邦訳な作家さんが。なので?相性が合ったり合わなかったり。相変わらず正常な狂気が気持ち悪い 村田沙那香サン『無』。感情が色となって現れる、郝景芳サン『ポジティブレンガ』など。う~ん。ほぼ挫折。2023/07/04