内容説明
フランス留学から帰国後、作家として歩み出した初期の貴重なエッセイ。フランスの思い出を描いた美しい表題作他、文学、宗教、狐狸庵ものから直筆漫画まで、本書でしか読めない垂涎の一冊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まる
4
遠藤周作は好きな作家。今回の幾多のエッセイは色々なタイプがあったが、冒頭の本の題名の"フランスの街の夜"は静まったフランスの街で1人異邦人として生きる孤独を描いて、実に見事だった。夜のフランスの魅力と、その静寂の奥に隠されている多角的な孤独がひたひたと迫ってくる。また、映画「汚れなき悪戯」の批評ではカトリックの立場からの見かたが記されて、信仰と作品と観客の繋がりを教えてもらえた。映画を見た時、子供だったと思えば、深く感じようもなかったが、それにしてもあのように宗教的に深い作品だったのかと思った。 2023/07/12
hirayama46
3
タイトルには初期エッセイとありますが、新しいものでは90年代の文章も収録されているので、新発掘エッセイ集という趣のほうが強いかも。性質上、別の本で読んだものと近い内容のものも多かったので、ファン向けのアイテムといえそうです。しかし、いろんなところに書いていたのだなあ……。70年代においては遠藤周作はそれほど小説を読まない人への知名度も高かったようですが(わたしはその時代に生きていないので推測ですが……)、あちこちの雑誌や新聞への精力的な寄稿がその理由のひとつだったのかもしれません。2023/05/04
ihatov1001
3
遠藤周作初期のエッセイ+α集です。まじめなものから狐狸庵節の効いた面白エッセイまでいろいろありますが、ご本人の渡仏にまつわるエッセイが面白かったです。フランスへ向かう途中の船が寄港した太平洋戦争の爪痕が残る東南アジアの様子、また留学中のフランスにて病を得て、死を感じつつ書かれた日記などを堪能いたしました。2023/04/04
TB
3
N図書館本。遠藤周作は4月に読んだ『私の愛した小説』以来。久しぶりになってしまった。「初期エッセイ」とあるが、初出は1951から1992まであり、「初期エッセイを中心に」が正確だ。できれば巻末だけでなく題の下にでも初出を書いていてくれるとありがたかった。副題をつけると、Ⅰ:若い時、Ⅱ:文学、Ⅲ:コラム、Ⅳ:映画、Ⅴ:真面目に、Ⅵ:ふざけて、かな。それにしてもⅢのコラムは、天声人語みてーだなと思っていたら朝日新聞での匿名記事だった。でもイザヤ・ベンダサンを本当のユダヤ人のように書いているのは頂けない(笑)。2023/02/12
アルプトロカ
2
遠きアオハル時代、狐狸庵先生のエッセイを夢中になって読み耽り読み返し、爆笑に腹筋がしびれた記憶が蘇り、期待して手に取った本であったが、40年という時の壁は私が長い時間をかけて作ったものなのか、実は見えていなかっただけで元々あったものなのか。答えはすぐに出ないが、今では受け入れられないであろうザ・昭和マインドな文面に違和感を覚えずにはいられなかった。 2023/09/28
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