内容説明
大風がイングランドを見舞った日、ロンドンの下宿ビーコン・ハウスでは珍事が発生する。新参者のスミスという男が、下宿の管理人ダイアナの友人である女相続人ロザマンドの話相手(コンパニオン)メアリーに唐突に求婚し、その上友人を訪ねてきた流行医師ウォーナーに銃を向けて発砲したのだ。彼はしかも、メアリーを連れて馬車でその場から逃走をはかった。ビーコン・ハウスの面々はスミスの奇妙な行為を裁くため、私的法廷を開く。検察側に立った犯罪学者サイラス・ピムと、弁護に名乗りを上げた皮肉屋マイケル・ムーンは、スミスを告発する、あるいは擁護する様々な手紙に基づき、舌戦を繰り広げるが――巨匠幻の傑作長編、新訳にて登場。/解説=松浦正人
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
288
★★☆☆☆ チェスタトン初期の長編で、奇矯な行動をするスミス氏の罪状に関する私的法廷の成り行きを描いた作品。 殺人、強盗、配偶者遺棄、重婚といった罪の嫌疑について、普通とは異なる視点でスポットを当てるというチェスタトンの得意な作風。しかし、それぞれオチが分かりやすい上、訴追側が無能すぎるため緊迫感に欠けるのが残念。 私的法廷で犯罪の県議を一つずつ晴らしていくというスタイルは短編向きだったかもしれない。2023/04/29
Tetchy
105
チェスタトンの作品のジャンルの1つに狂人ものが挙げられる。今では珍しくないが、20世紀初頭において彼は常人が理解不能な狂人にも狂人なりの論理があり、それに基づいて言動をしているのだと諸作で論じている。本書の主人公、奇妙な男イノセント・スミスもまさに狂人だが彼の奇行は論理では解読できない感情的な理解が説かれている。つまり左脳的思考と右脳的情緒との相克、せめぎ合いを説いているとでも云おうか。頭で判らなくても心で解るといった感じか。これまでのチェスタトン作品の中で私の常識から最もかけ離れた主人公であった。2025/02/07
本木英朗
22
英国の本格ミステリ作家のひとりである、G・K・チェスタトンの長編のひとつである。常ならぬ突風がロンドンを襲ったその日、下宿人ビーコン・ハウスを緑衣の男が訪れた――という話であるが……。半分も行く前からさっぱり分からなくなってしまった。やはり作者の長編・短編は、今の俺ではダメだってことだろうか? またいつか読もうと思う。……とりあえず以上です、はい。2023/03/26
歩月るな
10
「教えてもらいたいが、一体この天地のどこに思慮のある結婚があるんだ? 思慮のある自殺の話でもしたほうがましだ。」南條訳チェスタトン再臨。チェスタトン初期の長編小説であるので、あまりにもチェスタトン過ぎる内容のため、珍しく読みながら真相と言うかオチが解ってしまって(お得意の逆説によって、幻想を除けば無罪判定を得るための最適解が他にないくらい正当)むしろ解説にある通りの時代背景とチェスタトン自身の足跡を辿るような趣もある。頁数は少ないがラノベ三冊分くらいの分量はある故活字慣れしてないと厳しい。多様性と言う病。2023/02/11
ふゆきち
8
チェスタトンの長編に外れ無しと改めて認識しました。奇想天外です。2023/10/31
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