内容説明
闘争と激情。火花散る第三巻。
文化祭を終えてから咲馬たちは平穏な学校生活を送っていた。最初はクラスメイトに避けられがちだった汐も、今ではすっかり馴染んでいる。汐がクラスの人気者に返り咲く日も近い――そう思った矢先。咲馬たちの教室に、かつて汐が所属していた男子陸上部の能井風助が訪れる。
「勝負しろ。俺が勝ったら、男子陸上部に戻ってきてもらう」
長距離走者として汐のライバル的存在だった能井は、汐に勝負を挑む。ブランクのある汐には不利な条件。だが汐は、その勝負に乗ってしまう。
一方、クラスの問題児・西園アリサが、世良慈と衝突する。挑発を繰り返す世良に、怒りを募らせる西園。溜め込んだ鬱憤は理性を浸食し、やがて彼女は思いも寄らない凶行に走る。
「舐めんな、クズ野郎」
大切なものを守るために。あるいは何かを勝ち取るために。彼ら彼女らは、ぶつかり合う。
暴走する感情の行き着く先はーー。
『夏へのトンネル、さよならの出口』八目迷×くっかのコンビで贈る〈恋と変革の物語〉『ミモザの告白』第三弾。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星野流人
35
この巻は……めちゃくちゃ凄かったです。汐が女の子として生きることに強く反発していた西園と能井が、それぞれのかたちで決着を見るエピソードなのですが……。西園が疑心暗鬼からどんどん追い詰められていく様は、見ていて辛いものがありました。特に終盤、西園視点で精神的に叩きのめされていくのがまたしんどい……。それでも最後の最後に踏みとどまるチャンスを貰うことのできた西園は、ものすごく幸運だったと思います。能井にしろ西園にしろ……大切な人との人間関係ですら、間違った選択をしてしまう難しさを、強く感じるエピソードでした。2023/04/18
オセロ
35
文化祭を終え、汐の変化を受け入れる人達が増える一方で受け入れられない人もいて。そんな陸上部の能井とアリサの関係に決着が着くことに。 能井とアリサが汐の変化を受け入れられない理由はそれぞれ違うけれど、能井とは真剣勝負で、アリサには周りを巻き込んで現実を分からせて理解を深めていく展開は良いものでした。次巻は汐と紙木の過去編ということで楽しみです。2023/01/03
よっち
33
文化祭を終えてからすっかり周囲に受け入れられつつある汐。そう思った矢先に、かつて汐が所属していた男子陸上部の能井風助が訪れる第三弾。長距離走者として汐のライバル的存在だった能井が諦めきれずに汐に挑んだ勝負。そして変わりつつある状況を相変わらず認められない西園をわざわざ挑発する世良の真意。誰もがみんな変化を認められるわけでもなくて、流れが悪くなった時に軌道修正するのは難しいですよね。周囲が気にかけるわりには当事者の汐がわりと淡々としていたのが印象的でしたけど、その結末にはそういうことかと納得感がありました。2022/12/20
ほたる
16
青春の苦しみに深く切り込んでいく第三巻。周囲の環境と同様に汐に魅了されている自分がいた。汐自身が持つストレートな強さ、これに心奪われて仕方なかった。西園アリサの挿絵を見たときは時が止まったように感じたし、そこから先の展開にはゾワっとさせられた。タイトルに相応しい展開、そしてそれは責任の分散でもあるのかもしれないと思った。まだまだ先が見逃せない展開が続く。2022/12/30
サウナ探偵
15
おもしろすぎるだろ…。 天才やわ。単巻シリーズも好きだけど、ミモザの告白は頭2つ抜けてる。なんでこんなに面白い小説が書けるんだ。 本巻の「自らの不覚に愕然とする」担当は表紙の人。そのあたりも上手い。 世良が害悪すぎる。2022/12/23