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内容説明
日本の企業数は約三六七万社、そのうち九九%が中小企業で、規模が小さい「家業」ほど世襲率は高くなる。本来、実力ある者が後継すればいいだけなのに、システムとして不合理で無理筋、途絶や崩壊の可能性が高い「世襲」はなぜ多いのか。破綻を回避する術はあるのか。世襲が目立つ三業界――公職の私物化が進む政界、基幹インフラ産業の自動車・鉄道、藝は一代限りともいいながらほぼ世襲の歌舞伎界――を比較研究。このグローバルな時代にいつまで「家業」を続けられるか。実例でみる栄枯盛衰の世襲史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
112
戦後政治、世襲企業(自動車・鉄道事業)、歌舞伎の三部構成。具体的な家系図を示して、中川さん独特の微に入り細を穿つ説明に圧倒される。この国は、縁戚関係の吉田・岸・佐藤・安倍・麻生家で戦後77年のうち30年間の政権を維持し、政治家の世襲は益々増えている。歌舞伎も、弟子を養子にする従来の世襲が、戦後になって「実子による世襲」に変わる。世襲の閉鎖性は問題だが、一方で世襲を宿命づけられた人も大変だろうなあと思う。上皇陛下が皇太子時代、ご学友に「世襲の職業は嫌なものだね」と仰ったという話をどこかで読んだのを思い出す。2023/02/06
Carlos
41
政治と自動車・鉄道業界中心の民間企業、そして歌舞伎の世界の世襲まとめ。知らなかったこともあり面白かったけど歌舞伎は代々皆同じ名前ですこしわかりずらかった。2023/05/15
ぐうぐう
36
政界、財界、歌舞伎界を世襲という視点で解読する。そのストレートなタイトルからまず受けるのは、世襲批判に終始した内容なのだろうと言うことだが、実際はそうではないところが本書の特徴だ。そもそも世襲が当然となっている政界と歌舞伎界ですら、戦後に起きた(つまり最近の)現象であることが本書を読むと理解できる。政治家で言えば「敗戦とその後の公職追放で、戦前政治家の多くがいなくなり、リセットされたことで、吉田学校を中心に新世代が政界に入ることができた。(つづく)2023/01/18
香菜子(かなこ・Kanako)
15
世襲 政治・企業・歌舞伎。中川右介先生の著書。政治・企業・歌舞伎の世界は世襲が多い。世襲はだめ世襲はずるい世襲は許せないなんて言うのは簡単なことだけれど世襲にだって良い世襲と悪い世襲があるだろうし世襲のすべてが悪いなんて上から目線で決めるのは傲慢。世襲したくないのに世襲している人だって少なくないだろうし。世襲するために誰よりも努力して苦労している人だってたくさんいる。親の仕事を尊敬して親の仕事を継ぐことは尊いこと。世襲を批判して偉そうな気分になるのはおかしいと思います。2023/12/11
どら猫さとっち
9
日本では特に、家族や血縁を重んじる傾向が多いようだ。政界、企業、梨園。この3つに焦点を当て、それぞれの家と後継ぎの歴史を追った「世襲」のすべて。直径の血筋で継がせるケースもあれば、養子や女婿で継ぐケースもある。また直径の血筋でも、継がずに違う人生を歩む人もいる。大抵は世襲制が多いが、その役割に見合う人材かどうかは別問題だ。世襲は必ず破綻する。華々しいながら、危うい家族の制度を垣間見る、薄ら寒さも覚える一冊。2023/03/04