中世の美学 - トマス・アクィナスの美の思想

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中世の美学 - トマス・アクィナスの美の思想

  • ISBN:9784766428469

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内容説明

▼エーコの原点、待望の翻訳。
▼「暗黒の中世」像を打ち崩す、「美」にあふれた世界――。

1956年当時、ベネデット・クローチェら美学の大家らによって「中世に美学はない、一貫した美への関心はない」と言われていた。
そんななかウンベルト・エーコは研究者としてとりわけ思い入れの深い中世の思想家トマス・アクィナスの著作に向き合い、トマスのみならず中世思想の根柢には、一貫した「美の思想」が流れていることを明らかにする。

これまでの中世観を変容させ、『薔薇の名前』につながるエーコの躍進の契機となった待望の名著。

目次

凡 例
主要引用文献

第二版(1970年)への序文

第一章 中世文化における美学の問題
 一 歴史叙述
 二 中世の美的感性
 三 トマス・アクィナス
 四 美的な快の可能性
 五 本書の概要

第二章 超越概念としての美
 一 問題の定立
 二 事物に対する美的な視覚
 三 トマス・アクィナスの原典
 四 現代的な解釈
 五 13世紀の哲学的な伝統における超越概念としての美
 六 結論

第三章 美的な「視覚」の機能と本性
 一 問題の定立
 二 中世の原典
 三 トマスの原文
 四 美的な「視覚」
 五 トマスにおける知性的直観

第四章 美の形相的な基準
 一 トマスの文章
 二 形相概念の厳密化
 三 「釣り合い」――歴史的な事柄
 四 トマス・アクィナスにおける「釣り合い」
 五 「まとまり」
 六 「明るさ」――歴史的な事柄
 七 トマス・アクィナスにおける「明るさ」
 八 結論 

第五章 具体的な問題と原理の応用
 一 御子みこの美しさ
 二 人間の美しさ
 三 音楽の美しさ
 四 遊びと道化詩
 五 象徴の視覚
 六 聖書や詩の作品に見られる比喩と寓意
 七 教育のための寓話の手法
 八 トマスの詩学

第六章 芸術の理論
 一 芸術の発明
 二 芸術的な形相の存在論的な実質
 三 芸術的な形相の美的な特殊性
 四 美術が自律する可能性について
 五 芸術の自律性がもつ多義性
 六 結論

第七章 美的な「視覚」と判断
 一 美的な「視覚」の機能
 二 美的な「視覚」の本性

第八章 結論(1970年)
 一 トマス美学の中心にある難問
 二 トマス以後のスコラ学における形相概念の崩壊
 三 美のカテゴリーと中世社会
 四 トマスの方法論と構造主義の方法論

解説 「美」の宝庫としての中世哲学 山本芳久
物語作者エーコの原点を知るために
――訳者あとがきにかえて

人名・事項索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

69
ロマン主義と観念論を経て美を個人の「叙情的直観に従属させ」る現代の美学に対し、中世では美を「神の顕現」として見ると作者は言う。それは世界を聖書として読む、神の普遍的秩序として見ることで、「形而上学や存在論による厳密な探究の対象」でもあったのだと。本書は中世スコラの大成者トマス・アクィナスによるその探求を辿ってゆきます。作者は結論で、その体系が「最高度に一貫」していたことから抱える矛盾を示すことで、高度な哲学の体系の「使命」とそれゆえの「詐欺」と意義を示していて、過去の哲学者を訪れる意味も再確認できました。2023/05/16

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