内容説明
第2次大戦中,物語の語り手ライダーはブライズヘッドという広大な邸宅の敷地に駐屯する.「ここは前に来たことがある」.この侯爵邸の次男でライダーの大学時代の友セバスチアンをめぐる,華麗で,しかし精神的苦悩に満ちた青春の回想のドラマが始まる.20世紀イギリスの作家ウォー(1903-66)の代表作.(全2冊)
目次
作者序文
序章 ブライズヘッドふたたび
第一部 われもまたアルカディアにありき
第一章
セバスチアン・フライトおよびアントニー・ブランシュとの出会い はじめてブライズヘッドを訪れる
第二章
従兄ジャスパーの大諫言 魅力にたいする警告 オクスフォードの日曜の朝
第三章
わが家の父 ジューリア・フライト
第四章
英国のセバスチアン 国外のマーチメイン卿
第五章
オクスフォードの秋 レックス・モットラムとの食事、マルカスターとの夕食 サムグラス氏 英国のマーチメイン夫人 世界に背を向けたセバスチアン
〈解説〉イーヴリン・ウォーと『回想のブライズヘッド』
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
111
シニカルさと洒脱さ溢れる文章、そんな気概に溢れたウォーが好き。ここにはノスタルジーがむしろ多くみられるけれも、洒脱な遊びを好む上流階級の青年たちの荒廃に向かう様への描き方には、ウォーらしいシニカルさを感じる。まず退学になるブランシュが、ボートに乗る学生に向け、メガホンを通してエリオット「荒地」の一節をたむける場面など、オックスフォードの遊び心として最高だ。同世代の英作家をシリアスとダンディに分けるとウォーはダンディ、エリオットはシリアスに分類されるそうだ。斜陽の上流のウォーと奨学金英才のエリオット。2023/09/08
星落秋風五丈原
55
現在三十九歳、中年にさしかかろうとするライダーが懐かしむのは青春時代の一角を彩った風変りな友人セバスチアン、そして彼が最も生きやすい空気を作ってくれた青春の倦怠(The langour of Youth)、そして彼と共に生きた時代だ。第一次大戦後、市民階級が台頭し貴族達が財産を切り売りしなければならなくなるのは、英国ドラマ『ダウントン・アビー』でも描かれた。セバスチアンは既に当時の貴族社会からも落ちこぼれている。どこにも居場所が見つけられない彼は酒に溺れる。下巻では大人の世界に踏み出した二人がどうなるか。2018/09/26
SOHSA
54
《図書館本》イーヴリン・ウォー初読。どちらかと言えばシニカルな作品を書く作者だと思っていたが、本作はあまりに美しく哀しく郷愁に満ちている。通りすぎた過去というよりもまさに通り過ぎていかんとする今ここの残像を主人公は惜しんでいるかのようだ。ほろほろと流れるように物語は進む。下巻はいかに。2018/08/28
syota
35
ウォーは3作目だが、世間を冷たくあざ笑っているかのようなこれまでの作品とは正反対。第1次大戦後の英国を舞台に、自由を求めながら母親や宗教の束縛に苦しみ、繊細さゆえに自らの首を絞め酒に溺れていく侯爵家の次男セバスチアンの姿が、オックスフォードの学友チャールズの視線で描かれている。壮麗な大邸宅と絵のように美しい領地を持ち、華麗な生活を送りながらも家族はバラバラで、どう見ても下巻は悲劇的結末に向かいそう。作者の筆は古き良き時代への共感に溢れ、皮肉や冷笑は影を潜めている。直球勝負の正統派青春ストーリーだ。2017/11/22
みつ
34
第二次世界大戦のさなか1944年、陣営を点々とするチャールズが行き着いた先に、かつて学生時代に親友と過ごしたブライズヘッドの地が現れ、そこから学生時代の回想が蘇るという構成。戦争の苛烈な毎日と当時の破目を外した日々は対照的で一際鮮やかに浮かび上がる。中核を成すのは、親友セバスチアンとその家族との関係。第一次世界大戦での戦死者もいる、イギリスとしては珍しいカトリックの侯爵家に生まれたセバスチアンは、名家でありながら斜陽の路を辿る家族の中で、放逸な生活から抜け出せず、次第に酒に溺れるようになる。以下下巻へ。2023/05/13
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