力と交換様式

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力と交換様式

  • 著者名:柄谷行人
  • 価格 ¥3,850(本体¥3,500)
  • 岩波書店(2022/11発売)
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  • ISBN:9784000615594

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内容説明

生産様式から交換様式への移行を告げた『世界史の構造』から一〇年余,交換様式から生まれる「力」を軸に柄谷行人の全思想体系の核心を示す.戦争と恐慌の危機を絶えず生み出す,資本主義の構造と力が明らかに.呪力(A),権力(B),資本の力(C)が結合した資本=ネーション=国家を揚棄する「力」(D)はあるのか.

目次

序論
1 上部構造の観念的な「力」
2 「力」に敗れたマルクス主義
3 交換様式から来る「力」
4 資本制経済の中の「精神」の活動
5 交換の「力」とフェティッシュ(物神)
6 交換の起源
7 フェティシズムと偶像崇拝
8 エンゲルスの『ドイツ農民戦争』と社会主義の科学
9 交換と「交通」
第一部 交換から来る「力」
予備的考察 力とは何か
1 見知らぬ者同士の交換
2 自然の遠隔的な「力」
3 「見えざる手」と進化論
4 貨幣の「力」
5 定住化と交換の問題
6 共同体の拡大と交換様式
第一章 交換様式Aと力
1 贈与の力
2 モースの視点
3 原始的な遊動民と定住化
4 トーテミズムと交換
5 後期フロイト
6 共同体の超自我
7 反復強迫的な「力」
第二章 交換様式Bと力
1 ホッブズの契約
2 商品たちの「社会契約」
3 首長制社会
4 原始社会の段階と交換様式
5 首長が王となる時
6 カリスマ的支配
7 歴史の「自然実験」
8 臣民と官僚制
9 国家をもたらす「力」
第三章 交換様式Cと力
1 貨幣と国家
2 遠隔地交易
3 帝国の「力」
4 帝国の法
5 世界帝国と超越的な神
6 交換様式と神観念
7 世界宗教と普遍宗教
第四章 交換様式Dと力
1 原遊動性への回帰
2 普遍宗教的な運動と預言者
3 ゾロアスター
4 モーセ
5 イスラエルの預言者
6 イエス
7 ソクラテス
8 中国の諸子百家
9 ブッダ
第二部 世界史の構造と「力」
第一章 ギリシア・ローマ(古典古代)
1 ギリシア芸術の模範性と回帰する「力」
2 亜周辺のギリシアの“未開性”
3 ギリシアの「氏族社会の民主主義」
4 キリスト教の国教化と『神の国』
5 悲惨な歴史過程の末の到来
第二章 封建制(ゲルマン)
1 アジア的なあるいは古典古代的な共同体との違い
2 ゲルマン社会の特性
3 ゲルマン社会における都市
4 修道院
5 宗教改革
第三章 絶対王政と宗教改革
1 王と都市(ブルジョア)との結託
2 「王の奇蹟」
3 臣民としての共同性
4 近代資本主義(産業資本主義)
5 常備軍と産業労働者の規律
6 国家の監視
7 新都市
第三部 資本主義の科学
第一章 経済学批判
1 貨幣や資本という「幽霊」
2 一八四八年革命と皇帝の下での「社会主義」
3 「物神の現象学」としての『資本論』
4 交換に由来する「力」
5 マルクスとホッブズ
6 株式会社
7 イギリスのヘゲモニー
第二章 資本=ネーション=国家
1 容易に死滅しない国家
2 カントの「平和連合」
3 自然の「隠微な計画」
4 帝国主義戦争とネーション
5 交換様式から見た資本主義
6 資本の自己増殖を可能にする絶え間ない「差異化」
7 新古典派の「科学」
第三章 資本主義の終わり
1 革命運動とマルクス主義
2 十月革命の帰結
3 二〇世紀の世界資本主義
4 新自由主義という名の「新帝国主義」
5 ポスト資本主義,ポスト社会主義論
6 晩年のマルクスとエンゲルスの仕事
7 環境危機と「交通」における「力」
第四部 社会主義の科学
第一章 社会主義の科学1
1 資本主義の科学
2 『ユートピア』とプロレタリアの問題
3 羊と貨幣
4 共同所有
5 「科学的社会主義」の終わり
6 ザスーリチへの返事
7 「一国」革命
8 氏族社会における諸個人の自由
9 私的所有と個人的所有
第二章 社会主義の科学2
1 エンゲルス再考
2 一八四八年革命挫折後の『ドイツ農民戦争』
3 一五二五年の「階級闘争」
4 原始キリスト教に関する研究
5 共産主義を交換様式から見る
第三章 社会主義の科学3
1 物神化と物象化
2 カウツキーとブロッホ
3 ブロッホの「希望」とキルケゴールの「反復」
4 ベンヤミンの「神的暴力」
5 無意識と未意識
6 アルカイックな社会の“高次元での回復”
7 交換様式Dという問題
8 交換様式Aに依拠する対抗運動の限界
9 危機におけるDの到来

あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

57
E図書館。交換において、物は≪感覚的でありながら超感覚的な物に転化してしまう≫。商品の価値とは、物に付着した何かである。マルクスはフェティシュ(物神)と呼んだ(21頁)。小生は、エミール・デュルケームの社会学で初めて学んだことを想起した。マルクスがフェティシズムについて知ったのは、1842年にシャルル・ド・ブロス『フェティシュ諸神の崇拝』をよんだとき。ド・ブロスが最初に提起したフェティシュ概念。元来、アフリカの護符・呪物崇拝。言語起源は、feticoはラテン語のピジン語(27頁)。カントは世界戦争を予感。2023/05/12

ta_chanko

23
交換様式から世界を観る、柄谷行人の思想の集大成。A贈与と互酬=共同体、B支配と分配=国家、C等価交換=市場。この3つが相互に作用することで、その時代がつくられる。そして時代の危機に瀕したとき、D=交換様式Xが出現する。それは人々が望んで到来するようなものではなく、強迫的に訪れるもの。Aが高次元で回帰したもの。一時的なトレンドで終わるものではなく、パラダイムシフトを引き起こすものになる。CやBが支配的な世界において、自由・平等を回復しつつ危機に対応できるシステム。新たな普遍宗教的な信仰の到来と、行動の転換か2022/12/08

呼戯人

23
否応なく到来する未来としての交換様式Dは、歴史的にはイエスや釈迦、孔子やソクラテスとして現れてきた。それは、終末や徳を論じている人々である。しかし、1848年以降、資本=ネーション=国家の複合体として現れてきた交換様式A=B=Cへの対抗として、社会主義の科学である資本論以降のマルクスやエルンスト・ブロッホの登場によって、交換様式Dの姿がはっきりと現れてきた。「今後に戦争と恐慌、つまりBとCが必然的にもたらす危機が幾度も生じるだろう。しかしそれ故にこそ、Aの高次元での回復としてのDが必ず到来する」2022/11/22

シッダ@涅槃

20
マルクスやその他、ホッブズ、エンゲルス、ブロッホらの議論がこの時代にこんなにビビットに響くなんて。◆柄谷さんのテーマを持った単著は『倫理21』以来約20年ぶり。『倫理21』周辺では、誤読恐れずに言えば「個々人の目覚め」にかけていたような印象がある。しかしこの本では「力(霊力)」の様々な「交換様式」にフォーカスしており、特に前者は人の企図や意志力ではどうにもならないものと捉えられている。それらの分析こそが肝要ということ。◆「揚棄」を以前「廃棄」と同じ意味で読んだことがあるが、それでも間違いなさそう……。2022/12/09

hasegawa noboru

19
示される壮大な知の体系を前に「柄谷行人もずいぶん角が取れて、字面を追う限りにおいては、私ごときにも分からぬではない文章を書きなさるようになった」と愚にもつかぬ感想をまず吐くばかりだ。中身についてはカバーそでのコピー文が簡潔にして要を得る。<『世界史の構造』から一〇年余、交換様式から生まれる「力」を軸に人類史を再考し、柄谷行人の全思想体系の核心を示す。戦争と恐慌の危機を絶えず生み出す資本主義の構造と力を明らかにし、呪力(A)、権力(B)、資本の力(C)が結合した資本=ネーション=国家を揚棄する「力」(D)を2023/09/15

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