ちくま新書<br> ルポ 動物園

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ちくま新書
ルポ 動物園

  • 著者名:佐々木央【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/11発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075185

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内容説明

2008年に著者は、日本各地の動物園・水族館にいる、動物と動物に関わるひとびとを訪ねる連載をスタートさせる。「動物園とは動物を収集・飼育・展示する施設である」この定義から導かれる、動物園の持つ原罪とは何か。動物園のメディアとしての特性は何か。動物を擬人化してもいいのか。飼育係は、どのように動物と関わるのか。共同通信の記者が全国をまわって考えた、動物園の過去、現在、そして未来。

目次

はじめに 生きものスルーから「生きもの大好き」へ/第一章 動物園へ行く/1 増井光子さんの拒否から始まった/園長のリレー連載を企画する/執筆依頼して玉砕、逆に説得される/園長、記者の劣化を嘆く/2 連載をスタートする/反戦を訴えるドゥクラングール/ダスキールトンの死と飼育係と女の子/オカピを「かわいい」と言わせたい/コウノトリ野生復帰の現場に行く/池田啓さんのメディア批判/3 昆虫生態園で問いを突き付けられる/飼育係は調理人でもある/展示できないチョウもいる/ボーンフリーという言葉を知る/擬人化は常に否定されるのか/第二章 動物園を知る/1 動物園とは何か/客観性を否定するタイトル/リード文に隠された難問/大規模動物園に違和感を持つ/必要条件から定義を試みる/法律も動物園を定義してこなかった/定義からメディアとの相似性をみる/定義が露わにする支配・侵害/最大の侮辱は「見世物」という言葉/原罪を消す逆説的な方法/2 正当化するための「四つの役割」/中川志郎さんとJAZAの大きな違い/域外保全は「動物園保全」と呼びたい/「たかがカエル」というなかれ/生きものに出会うこと自体が教育/「野生からの使者」として研究する/文体からして楽しげな「レクリエーション」/生きものにとっての不当さは消えない/五六文字の侵害極小化宣言/公共性と商業性の相克もメディアに似る/3 ゾウのシンポジウムから広がる出会い/求む! 良き水先案内人/会うべき人を浅倉義信さんに教えてもらう/錦織一臣さんの基礎的だが深い話/二刀流にチャレンジする/入江尚子さんの魅力的な応答を記事に/遠藤秀紀さんの扉をたたく/「かわいそうなゾウ」の骨どこへ?/第三章 動物園で学ぶ/1 『かわいそうなぞう』の虚構と真実/本質的使命を果たしているか/空襲はなかったのにゾウが殺された/殺害を命じたのは軍部ではなかった/最大の動機は市民への警告/絵空事のクライマックス/「時局捨身動物」という擬人化/ジョンの殺害着手が早かったのはなぜか/再びなぜ「逃がしてはいけない」のか/Zoo is the Peaceと唱えるだけでは……/わたしは石をなげうてるか/2 カリスマとノンカリスマ/目玉がないところが目玉/ノンカリスマ種にこそ注目せよ/イカに人生をささげる/サンマがカリスマ種に転化する/3 「擬人化」の二つの方向性/天皇と握手したチンパンジー/おサル電車はなぜ消えたのか/事実婚でさえない雌雄のカバ/ハチ公像が〝誉れの出陣〟/ハチ公の実像をどう見るか/4 擬人化が開く回路/『雪の練習生』が表現する動物の人権/シロクマピースが教えてくれたこと/わが子に「飼育」はそぐわない/忘れないゾウと号泣する雄牛/名付けるとき立ち上がる人格/死出虫のリアルの果てに/第四章 動物園で考える/1 アニマルウェルフェアとは何か/動物の幸せを科学する/マガモになったローレンツ/環境エンリッチメントは「うれぱみん」/とことん愛されて幸せなマナティー/緑に囲まれた生息環境展示はうれしい/2 ウェルフェアの傘を広げたい/山本茂行さんが飼育係にこだわる理由/ヒューマンエラーは必ず起きる/人間の安全に対して脆弱な体制/下村幸治さんが説く幸せな動物園/生きものと人のウェルフェアを定義に/3 消えていいのか「命の博物館」/巡回シンポで訴えた危機とは/自然を生かし人と人をつなげる拠点に/市民が望んだ緑と生きものの公園/クラゲで巨大水族館に対抗する/魚歴書に通信魚……べらぼうに面白い展示説明/漫画を描いて動物の気持ちを通訳する/ポップな水族館が固定観念を砕く/飼育係自身が発信してほしい/消えるときが来るまで/おわりに/取材した動物園水族館/主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

69
想像していた内容とだいぶ違った(動物園の運営に関する本かと思っていた)が、動物園の倫理性という問題についても一度考えてみたかったので、いい機会だった。動物の擬人化という表現が何度か使われるけれど、人間に動物たちのベストな飼育条件などわかるはずもない。絶滅寸前の種族の保護という意味での施設ならまだわかるが、それも大きな自然の循環から考えたら人間のエゴの部分があるだろう。だんだんと在り方が問い直される存在なのだなと思った。2022/11/21

gokuri

3
15年動物園の記事(コラム)を連載した記者がつづる動物園・水族館の現在。 今日的な動物・水族館の役割を意識し、そこではたらく飼育係から聞き取った思いや、悩みなどが伝わる。 「飼育」という言葉への違和感や、小説をつうじて動物の擬人化の疑問など、結論の出ることのない「人」と「いきもの」の関係をつくづく考えさせられる。2023/05/31

C

3
人間からみた動物から始まって、近くにいる『飼育員さん』から始まり多くの人を通した動物園水族館の動物たちについての考察、時代の流れもわかる。私は動物学ではニンゲンも動物の中の一種類として考えるという一文に恥ずかしい話ハッとした。筆者といっしょに本の中に紹介されている各界の博識者から、多角的な視点で物事を見るためのスキルを教えてもらえる感じ。自分の固定観念をバッキバキに壊せて爽快な読後感。2023/02/14

お抹茶

2
動物園紹介というより動物園の在り方やアニマルウェルフェアを考える本。著者が属するマスメディアとも比較しながら,長年の取材を通して変わってきた自身の考えを記していく。特に,生きものを擬人化することに対する危険性について深く論じている。戦時中に殺害された上野動物園の象の話やハチ公の話に虚構が入り込んでいるというのは知らなかった。関係者への取材を通して,動物園・水族館で何気なく使われる用語への違和感も浮かび上がってくる。2023/04/05

onepei

2
動物園からハチ公までヒトが動物を飼うということに焦点。2022/12/11

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