ちくま新書<br> ソ連核開発全史

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ちくま新書
ソ連核開発全史

  • 著者名:市川浩【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2022/11発売)
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  • ISBN:9784480075192

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内容説明

第二次世界大戦後、大規模な軍拡競争を伴う東西冷戦下のソ連において推進された原子力政策は、人類史をどう変えたのか。最初期の放射線研究、史上最大の水爆実験から、世界初の原子力発電所稼働、東側同盟国への技術提供、原子力ビジネス、そして史上最悪のチェルノブイリ原発事故に至るまで。危険や困惑を深めながらも試行錯誤を重ね、科学者・技術者を総動員して推し進められた知られざる数々のプロジェクト。現代ロシアの基礎をなすその計画の全貌に迫る、はじめての通史。

目次

はじめに/チェルノブィリ原子力発電所、一九八六年四月二六日午前一時二三分/ヴァレリー・レガーソフ「わたしの責務はそのことについて語ること」/ロシアのウクライナ侵攻と原子力発電所/人類史の中の核開発/第一章 核兵器開発の発端──冷戦の勃発/1 第二次世界大戦と原子爆弾/放射性物質の研究史から/各国における計画の始動/2 ソ連〝ウラン問題プロジェクト〟の始動/科学者たちの構想/対外諜報活動から/科学アカデミー〝第二研究所〟/3 ヒロシマ、ナガサキの衝撃──計画の格上げ/計画の仕切り直し/最初の実験炉Ф‐1炉/4 原爆開発の諸過程/A炉の挫折/第八一七コンビナート(チェリャビンスク‐40)/第一一設計ビューロー(アルザマス‐16)/一九四九年八月二九日──РДС‐1実験/5 РДС‐1からРДС‐6へ/РДС‐2/РДС‐6──ソ連初の水素爆弾/波紋/第二章 核兵器体系の構築──ウラン資源開発・ミサイル・原子力潜水艦/1 科学者・技術者の動員/「冷戦気候」/集権的多元主義モデル──ソヴィエト社会の理解/〝愛国的、唯物論的物理学者〟/コスモポリタニズム・対外拝跪主義/2 核兵器製造施設群の壮大な展開/〝特別閉鎖都市〟/ウラン資源開発/東欧〝同盟〟諸国からのウラン提供/3 核爆弾・核弾頭から核兵器体系へ/ミサイル/ウスチーノフと装備人民委員部(省)/原子力潜水艦の開発──АМ装置の躓き/К‐3──ソ連初の原子力潜水艦/液体金属冷却炉搭載の原子力潜水艦開発/核戦略の展開/第三章 放射能の影──米ソ〝サイエンス・ウォー〟の帰結/1 ソ連における放射線影響研究/西脇安の訪ソ、ノライル・シサキャンの訪日/チェリャビンスク‐40における放射線被曝と〝ウラルの核惨事〟/ソ連国内の放射線影響研究/放射線生物学=物理化学生物学研究所/2 放射線影響研究をめぐる対英米〝サイエンス・ウォー〟とその挫折/ソヴィエト科学者による英米流放射線影響評価への批判とその躓き/「電離放射線の生体への一次的影響、および初期影響に関する国際シンポジウム」/乗り越えられなかった壁/放射線影響〝楽観論〟の横行/アンドレイ・サハロフ/第四章 ソ連版〝平和のための原子〟/1 原子力平和利用キャンペーン/ヴィシンスキー演説/アイゼンハワー「アトムズ・フォー・ピース」演説に先んじて/核兵器と放射線の恐怖/2 オブニンスク原子力発電所/АМ装置──〝陸に上がった〟潜水艦用原子炉/押し寄せる見学者たち/3 国連第一回原子力平和利用国際会議/〝前哨戦〟──ソ連邦科学アカデミー「原子力平和利用会議」/ジュネーヴにて──〝ソヴィエト・サイエンティスツ・ミート・アメリカン・サイエンス〟/「アメリカは原子力発電に関心がない」!?/ソヴィエト科学者の〝反省会〟/第五章 原子力発電の夢──経済停滞とエネルギー危機のなかで/1 黒鉛チャンネル炉/ベロヤルスク原発一号炉/ジェジェルン博士の警告/《РБМК‐1000》型/その普及/2 発電所用軽水炉開発/ノヴォ ヴォロネジ原発一号炉/沸騰水型軽水炉開発の蹉跌/《ВВЭР‐1000》型/3 高速中性子炉の開発/〝核エネルギー開発の総路線〟/シェフチェンコ原発のБН‐350炉/現役の高速中性子炉──БН‐600炉とБН‐800炉/4 核融合炉へのトライアル/核融合を〝制御する〟/核融合研究開発の国際化/5 ソ連経済の停滞と原発/労働力不足とインフラストラクチャー建設の停滞/深刻なエネルギー事情/〝産業目的地下核爆発〟/アストラハン・ガス田の地下ガス貯蔵庫/東部の石炭資源開発とその失敗/原子力発電への期待と不安/第六章 東側の原子力──〝同盟〟諸国とエネルギー政策/1 合同原子核研究所/〝国際協力〟の機運と合同原子核研究所/巨大粒子加速器/〝国際共同研究〟の成果/2 中国への原子力科学技術支援と中ソ対立/新中国指導部の核武装への渇望/マルィシェフ・クルチャートフ書簡──第一の書簡/マルィシェフ・クルチャートフ・ヴァンニコフ書簡──第二の書簡/対中国核兵器技術供与の実際/中ソ対立と対中国核兵器技術供与の評価/3 対東欧〝同盟〟諸国への原子力発電技術提供/対東欧エネルギー支援の負担/対東欧〝同盟〟諸国への原子力発電技術提供の枠組み/ギドロプレス──唯一の軽水炉メーカー/東欧諸国における原子力発電所建設/東欧原子力発電の〝異端〟/4 燃料サイクル/重層的な核燃料サイクル/ウラン資源/ウラン濃縮/核燃料/使用済み核燃料の処理/放射性廃棄物の貯蔵/5 〝プロレタリア国際主義〟/第七章 ビジネス化する原子力──ソ連解体後/1 ソ連核開発四十数年の帰結/ソヴィエト市民の原発への疑問・不信/核兵器製造施設からの放射性廃棄物/原子炉などからの放射性廃棄物/記録・回想のあいつぐ出版──過去のものとなりつつあった核開発/2 〝ニュークリアー・ルネッサンス〟/〝原子力エリート〟の反撃/核燃料輸出/国際ビジネスへ/「ロスアトム」の現在/おわりに/〝原発大国〟ウクライナ/冷戦とソ連の核開発/ソ連の経済停滞、エネルギー危機と原子力平和利用/〝原子力共産主義〟?/あとがき/参考文献/図版出典一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まーくん

87
秘密のベールに包まれていたソ連の核開発の歴史についてソ連(ロシア)の文献を引用し述べている。スターリンはマンハッタン計画についてスパイ情報を得ていたことは良く知られているが、米国の核独占に脅威を感じ体制の危機さえ案じ、核開発を急がせた。諜報活動の成果は開発に直接役立つものではなく、複雑な計算・実験は独自に取り組まなければならなかった。(但し、完成できる道筋を知ることは大きい)米国に遅れること4年、1949年、ソ連は原爆を完成させ、水爆も同様に後を追った。冷戦は厳しさを増し、核軍拡に拍車がかかる。⇒2023/03/04

skunk_c

67
ソ連時代の核開発を核爆弾とその製造用原子炉、原子力潜水艦、そして原子力発電から核融合までを概説する。端々に見えてくるのが、従事する労働者の被曝をいとわない乱暴な開発姿勢で、その被曝線量たるや驚くべき数字が上がっている。また核爆弾を発破代わりに使うとかの信じられない話も。また、アメリカに対抗するため、かなり強引な開発が進められた様子が分かるが、その中でも批判的学者がいたり、特にスリーマイル後には原子力反対運動も起こっていたなどの話もあって、イメージしていたのとはちょっと違う面も。ソ連崩壊後の続編を期待。2022/12/12

榊原 香織

66
チェルノブイリ原発事故にもかかわらず、ウクライナて原発大国なんですね(電力の55%) 1980年代のソ連、”余剰核爆弾を発破代わりに利用する平和=産業目的の地下核爆発が100回以上実施”恐ろし~、平和利用てなに~2023/02/09

Ex libris 毒餃子

13
ソ連の核開発史を網羅できる本。天然資源が多いイメージだったが、コスト面で原発が開発される経緯が分かってよかった。2022/11/13

ジュンジュン

10
ソ連における核開発は、ソ連がその時々に直面した課題によって左右されてきた。故に、その歴史を追いかけることは戦後ソ連の、延いては冷戦の歩みを見つめるに等しい。そして、その流れはプーチンのロシアにまで続いている。意外にも、原子力の平和利用・原発第一号はソ連。理由がまた”っぽい”。原子力潜水艦の推進エンジン用に開発されながら、その目的を果たさなかった「AM装置」。その開発当事者達は自分達の失敗を糊塗する為、開発目的を平和利用へと素早く方針転換した結果だという。2023/05/23

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