内容説明
人里はなれたところにある〈ザ・ローレルズ〉で、過去の新聞記事をスクラップしながら、わたしは回想する――英国の大手スーパーマーケットの社長マイナ・アプルトンの秘書として活躍した日々を。長くわたしは、完璧な忠誠心と職務遂行能力をもって、私生活を犠牲にしてまで彼女に仕えてきた。マイナの父を会社から追い出したときも、名誉毀損で記者を訴えた裁判のときも。強い信頼で結ばれたこの関係は、ずっと続くと思っていた――オフィスに警察がやってくるまでは。予測不能の展開に、じわじわとにじみ出る怖さ。俊鋭が放つ、傑作サスペンス!/解説=若林踏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
72
大手スーパーマーケットの社長マイナを支える秘書のクリスティーン。彼女の回想により語られる2人が両輪となって働いた最高の日々そして裏切り。 果たして結末には何が待っているのか ?充実した日々から一転、次第に不穏な空気が立ち込めていく2人の18年間。読みながら何となく予測はしていたが、それでも衝撃のラストは結構なダメージ。美しくカリスマ性を持ったマイナに心酔するクリスティーンは家庭生活も全て犠牲にして彼女に全身全霊で仕える。不都合な事は見て見ぬふりをしてきた彼女の最後の決断に恐怖するじわじわ怖いサスペンス。2023/02/08
イエローバード
19
憧れのセレブ社長マイナに気に入られ、彼女の個人秘書になったクリスティーン。だが私生活を二の次にしたせいで夫や娘に去られ、ついにはマイナとの関係も……。うーん、こんな悪い女社長に18年も尽くすかなあ。そこがどうしても納得できず、個人的には残念だった。そういえば前作の『夏の沈黙』にもやっぱり納得できない、しかも決定的な部分があったっけ。2023/03/26
うーちゃん
17
魅力的な女性社長マイナに秘書として雇われたクリスティーン。要求の厳しいマイナのため私生活の全てを擲ち、マイナのためならどんな嘘でも吐いてきたが、あるとき警察がやって来て・・。「プラダを着た悪魔」がサスペンスだったら?みたいなお話。人を見下すマイナにも、そのマイナに嬉々として仕え続けるクリスティーンにもドン引き(娘かわいそう・・)。派手な話ではないが、「ローレルズ」「果物ナイフ」「あのときの出張」等、小さなもの、出来事が時限爆弾のようにあとから爆発し、読者に驚きをもたらす。後味は悪い(昏い)が、面白かった。2023/03/04
いづむ
16
大手スーパーマーケットの跡取りで魅力的なマイナを支える秘書のクリスティーナ。多忙と大きな責任をともに切り抜ける二人の関係性に違和感と異常さを感じる一方、私の周りでもよくある光景で、それがまず空恐ろしい。どこで間違えてしまったのか、気づけるようで気づけそうにもない不安にも襲われる。クリスティーナの狂いっぷり、どうですか?私は大好き。2023/02/09
本の蟲
14
派遣先のスーパーマーケットチェーン本社で、社長マイナの目に留まり個人秘書として雇われた主人公クリスティーン。以来18年間、急成長する会社の中で忠実に彼女に仕えてきた。自身の私生活を犠牲にして、公私にわたり彼女の生活をサポートし、あらゆる指示を「上手く」やっていた。しかしある日、本社が警察に踏み込まれ…。粗筋は単純だが、「秘書」という立場と、「信頼」「忠実」「友情」という言葉で人がいかに思考停止に陥るかが読ませるポイント。人は見たい事柄しか見えない。特に上記3つの言葉を、上の立場の人間が発する場合、要警戒2023/01/15