内容説明
現在の児童精神科医療の現場では,これまで“発達障害”と呼ばれてきた神経発達症群の特性を持つ子ども,養育環境での児童虐待をはじめとする逆境体験に傷つき複雑性PTSDに苦しむ子ども,小中学生の年代で神経性やせ症となり生命の危険に直面している子どもが増えている。家族や施設職員は対応に行き詰まり,しばしば児童精神科入院治療に希望を託すしかない状況となり,それらに対応する児童精神科診療,およびその一環としての入院治療への期待が高まっている。
このように入院治療への需要が膨らむ状況に応じ,児童精神科専用病床数は増えてきてはいるものの,それに応えるだけの数には至っておらず,常に入院待機者が存在している現実がある。
そこには児童精神科病棟とはどのような環境で,その中で子どもはどのような入院生活を送り,治療がどのように行われ,また教育はどう保障されているのかなど,児童精神科入院治療の実際が外部から見えにくいことが理由としてあるだろう。
本書は,こうした児童精神科における入院治療の現状と課題を,症例も含め複数の観点から論じることを通し,今後の児童精神科入院治療の進むべき道を探り浮かび上がらせる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソーシャ
4
時代は脱施設化の流れですが、国府台病院出身者を中心とする執筆者による児童精神科臨床における入院診療の意義についての論考や症例報告を集めたアンソロジー。臨床の喜びと苦しみがたっぷりつまった一冊で、実際の診療でどんなことを考え、悩み、行っているのかがわかる一冊になっています。他の診療科とは違ってかなりの期間をかけて診療を行っているところが印象的でした。2022/10/29
オカヤン
2
購入。サイン頂く。バイブル的存在。筆者の齊藤万比古先生は、暖かく厳しい、そして深い。いつも勉強させていただいております。理解する、ということにはは多くの知識、経験、粘り強い心が、求められることを忘れていけない。最後の症例の最後に、長く安定した関係が効果があったと思うと。治療チームをどう結束するか、1環境を整える2本人を支える3関係者で情報共有する。忘れない。頑張る。楽しむ。悲しみ、そして喜ぶ。本人、家族だけじゃなく、スタッフも苦しみはあります。それが共有できて嬉しい。みんなで支えあいたい。2023/09/15