内容説明
北海道・大沼湖畔に佇む2つの児童自立支援施設。そこではさまざまな事情で親元を離れた少年少女たちが、自立のために職員たちと一つ屋根の下で暮らしていた。 施設を束ねる藤城遼平の娘・ゆきは札幌の病院で働く新人の理学療法士。偶然、父の教え子である同世代の摩耶が歌うYou Tubeを見たことから、摩耶そして同じく教え子である兄・拓弥の兄妹と出会い物語は動き始めていく……。
「非行児はずっと非行児」と、登場人物の一人は投げかける。人は変われるのか、傷を負った子供の心を大人は癒すことができるのか――。実在の児童自立支援施設を取材し、児童福祉を巡る現実とともに、愛を求めて傷つき、もがき、それでも生きていく若者たちの繊細な心情を描き上げた著者渾身の一作。
待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こばゆみ
10
北海道にある、児童自立支援施設の施設長とその娘、施設に通っていた兄妹の人間模様を描いたお話。複雑な家庭に育った兄妹が施設長と交流を深める中盤までは良い話だな〜と思って読んでいたけれど、施設長の娘と兄が恋仲になって子どもを身籠る、最後の怒涛の展開にはちょっとついていけなかったのでした…2022/12/04
いちご
0
昨年読んだ本。児童自立支援施設の出身者と施設長の娘の恋愛もの。児童自立支援施設の存在を知らなかったので勉強になった。恋愛ものなのか施設の話なのかどっちつかずだった印象。恋愛ものとしてはありふれていたので、実際に在籍していた拓也の目線で読んでみたかった気もする。気後れしたり、偏見や自分自身のコンプレックスとの葛藤とか。
もっちゃん
0
自分の周りもいるんだろう?といつも思う。割合から考えると、私の周囲にも私が気付いていないだけで、虐待や貧困に苦しんでいる子やヤングケアラーがいるのだろう。子どもたちには何の責任もないし、何もするすべがない。社会の責任だ。摩耶や拓弥のように信頼できる人と出会い、新しい人生を歩んでいく子が一人でも増えてほしいと願う2023/09/05
ponnnakano
0
実在の児童自立支援施設を取材したとのことなので、物語の根底にリアルが描かれていると思うと苦しい。みなナイーブで傷つきやすくどうしていいかわからない。偏見の目で見られる子供たちの社会の中でも、更にいじめがあったりするって、なんて悲しいことだろう。そんなことをしなくても大丈夫なんだと思えるようになったら飛び立っていけるのかな。セバットのような場所を誰もが見つけられたらいいけれど、そうなってないから小説の題材になっているんだろうな。と思いつつ、やはり誰もが自分のセバットを見つけられるようになってほしいと思う。2023/08/17
いもこ
0
児童福祉に生涯を捧ぐ藤城。その娘のゆきが藤城と児童自立支援施設で関わった兄妹と出会い…という筋書き。マヤと藤城、ゆきとリハビリのおばあちゃん周りのストーリーは好きだった。とはいえ全体的に散漫な印象。藤城父娘の内側がよく分からず、最後も「スン…」と読み終えた感じ。あと、藤城が施設の子供たちの背景を自分の家族に話すのが結構引っかかった…。冬のセバットの描写は、表紙そのままにうつくしかったです。「小綺麗な話」から一歩出たものが見たかった気がする。2022/12/04




