内容説明
「チャリティ(慈悲)」と名付けられた、複雑な出自をもつ若い娘のひと夏の恋──
ニューヨークの上流社会を描いた『歓楽の家』(1905)、『無垢の時代』(1920)で
知られ、女性初のピューリッツァー賞を受賞したイーディス・ウォートン(1862 1937)。
同じくニューイングランド地方の寂れた村を舞台に、閉塞的な社会に生きる人々を描いた『イーサン・フローム』(1911)と並ぶウォートン中期の名作、待望の翻訳出版。本邦初訳!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mii22.
39
ニューイングランド地方の寂れてた村の弁護士に幼い頃引き取られた娘チャリティ。自分の複雑な出自を恥じ、後見人であるロイヤル弁護士を嫌い「ああ、何もかもうんざり!」とつぶやくチャリティ。そんなチャリティがある夏都会からやってきた青年に恋をする。父権社会での女性の自立に挑戦しようとするチャリティ。男性に庇護され自由などない時代にチャリティの夢は叶うのか。彼女を取り巻く背景を考えれば痛みと諦めを伴うものになることは避けられない。だからこそひと夏の恋は切なくその記憶は美しいものであってほしい。2025/06/29
M H
32
チャリティと名付けられた複雑な境遇をもつ若い娘。地元の名士的な存在の養父と暮らしているが、関係を迫られる過去もあり、早く出ていきたい。ほかにも嫌なことがあってもうたくさん。そんな時、一人の青年に出会う。ひと夏の恋は彼女をどこへ運ぶのか、何に晒されたのかを思うと過酷ともいえる道行き。併録されている本作などを読み解いた論考が時代背景とウォートン作品の女性像の理解を助けてくれる。ややぎこちなく感じる訳文だが、ここではない場所を求める懊悩は強く伝わり読めてよかった。2022/11/26
星落秋風五丈原
29
ヒロインの名前はチャリティ。慈愛・慈善・博愛と素晴らしい意味を持つ名前だが、あいにく生母がつけたのではない。養父のロイヤルは、17歳の時チャリティに関係を迫り、全力で拒否したことがある。とんだ光源氏である。舞台はニューイングランドの小村ノースドーマー。ウォートンがよく舞台に選ぶNYは遠景として登場する。かつてロイヤルは法曹家として都会で活躍したが、妻の懇願により生まれ故郷の村に戻って来た。村では自分を生かす仕事の機会は皆無に等しいが、弁護士として一定の尊敬は受けている。2022/11/14
ケイトKATE
28
アメリカ北東部で山村で生まれた少女チャリティ(”慈悲”を意味するが不思議な名前)は、両親に問題があり後見人で弁護士のロイヤルに引き取られた。しかし、村は閉鎖的に加えロイヤルはチャリティとの後妻に迎えようとしていた。歳の離れたロイヤルとの結婚に拒絶反応を覚えるチャリティの前に、建築家のルーシャス・ハーニーという青年と出会うが…。ロマンティックな恋愛小説と思いきや、田舎で暮らす女性の息苦しさが伝わってきて陰鬱な気分になった。最近、イーディス・ウォートンの小説の新訳が登場しているが他の作品も読みたくなった。2025/07/11
nami
20
今の自分が置かれている環境がたまらなく嫌で惨めで仕方がないのに、他の場所で適合することも出来ず、結局は慣れた今の環境を手放せない苦しさは何となくわかる。安定した生活ではあるけれど、見えないだけですぐ側にある暴力や権威から逃れられない日々。知的で頑固で負けず嫌いな少女チャリティが、外の世界に夢を見ては傷付き、どこか諦めたように今の環境の中で必死に希望を見出そうとする姿が痛々しい。2024/11/17
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