内容説明
愛する者よ、無垢なる日々よ――。生と死のあわいを漂いながら、失われて二度とかえらぬものへの、あふれる惜別の想いを、ノスタルジックにうたい続けた、夭折の天才詩人、中也。哀切で甘美なことばが、胸をうつ調べとなって響きあい、はかない余韻が心に沁みる2冊の詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』に、詩集として編まれなかった作品も併せた140篇の詩篇を収録。(解説・吉田 生)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さゆ
105
人に触れたいのに孤独を選んでしまう、詩人としての夢をみる、大切にしていた幼少の息子が亡くなるなど、理想と現実の間での相反する葛藤がぶつかり、詩という火花と散るかのような儚さや刹那さを感じた。しかし、そこには確かで微かな希望がある。いい意味で青臭く、読むたび10代のときの気持ちが甦ってくる。「我がヂレンマ」「春日狂想」「生ひ立ちの歌」「初夜の夏」らへんが好み。2023/12/06
青蓮
104
切なくて淋しい詩集、というのが第一印象。静かな秋の夜にぴったりな詩集です。とは言え、やはり詩に慣れてないので、難解だなぁと言うのが本音ですが、でもそれだからこそ、色々と自由に想像を巡らせて楽しめるのだと思います。お気に入りは、有名な「サーカス」。2015/09/23
クプクプ
85
中原中也の本は初めて読みました。巻末の解説と同じ意見になってしまいましたが、67ページから始まる「山羊の歌・無題」の詩が一番、心に響きました。中原中也が、自分には生きる目的が愛する女性に尽くすことしかない、という内容でした。私も周囲から、もうやめときなよ、と言われながら10年尽くした彼女がいます。この詩を読んで、私と彼女との10年が肯定されたように感じて、嬉しい読書になりました。2022/05/20
優希
53
生と死の狭間を漂いながら、2度と戻らないものへの惜別の想いをノスタルジックに謳っていました。哀切ながら甘美な言葉と調べが溶け合い、美しい余韻を残します。2023/03/27
mizuki
53
喪失感漂う人生の中で書かれたから、こんなにも寂しさあふれる詩ばかりなのですね。朧げな詩はわたしに不安と恐怖を与えてくるのです。中也と向き合うことのできない自分を知っただけでも、実りある読書になったのかな⁇ 再読した時にはもう少し中也と向き合いたいと思います。2017/01/26