内容説明
「個人的なものの領域」とは親密な関係性が醸成される空間であり、「心の自由な空間」である。本書は理論的な側面と具体的な事例から他者と共存するために個人的なものを個人的なままに止めておくことの重要性を明らかにする。さらに個人的なものの核となるもの、私を私たらしめるものとしての「想像力」の在り方について考察する。
目次
まえがき
第一章 平等──自由で対等な関係
1 社会的なものと平等
2 個人的なものの領域──二つの力に抗して
3 隠されなければならないもの
4 愛の関係──マンビーとカルウィック
5 個人的なことは、個人的である
第二章 尊厳──他者との共在の可能性
1 グローバリゼーションとジェンダー
2 「第二の母」という問題──育児と掃除
3 公私区分の狭間で出会う女性たち──私的領域の特異性
4 他者を尊重するということ
5 自由な主体
第三章 反転──美という評価基準
1 美醜をめぐる葛藤
2 傷つく言葉
3 心の中の問題
第四章 無限──虚構のリアル
1 やおいとは何か──二つの特徴
2 やおいの想像力──虚構としての性的身体
3 妄想する私の不在──カップリングの快楽
4 やおい的心性の共有──やおいとBL
5 「アイドル」と現実──想像力の深さと拡がり
6 女性同士の親密な関係性──やおい的心性の基盤
本書を結ぶにあたって/果てなきもの
あとがき
文献
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のほほん
1
「個人的なことは政治的である」というテーゼはよく知られているが、著者はあえて個人的なものは個人的なままに止めておくべきと提起している。公私の明確な区分は、社会的なものの画一的な平等を個人的なものの領域へ均質に一様に拡張していく力と、個人的なものの領域における関係性を差別的なものへと変えようとする家父長的な抑圧の力への抵抗に繋がるという点で重要である。こうした問題提起は、筆者がフェミニズムの観点から中心的に論じている二人の「愛の関係」に限らず、マイノリティを巡る問題を考える上でも有用だと思う。2019/08/01
ベロニカ
1
古来から「やおいはファンタジーである」と言われるがそれはどういうことか、「個人的なものの領域」「虚構」「やおい的心性」をキーワードに分析を試みている。完全解析には至らないが参考になる。中島梓先生にしっかり言及されているので信用できるやおい論。2019/05/15
りんたろー。
0
分かりやすい文章。勉強になった。著者による他の著書も気になるところだ。さしあたって、『世界の儚さの社会学』を読んでみたい。2014/06/30