内容説明
ネット上の陰謀「Qアノン」を妄信する人々によって引き起こされたアメリカ連邦議会襲撃は、世界を震撼させる事件であった。21世紀の今、荒唐無稽な言説が多くの人に信じられ、政治的影響力すら持つのはなぜか。本書は、実証研究の成果に基づき、陰謀論受容のメカニズムを解説。日本で蔓延する陰謀論の実態や、個人の政治観やメディア利用との関連、必要なリテラシーなどを交え、「民主主義の病」への対抗法を指南する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
148
選挙を盗まれたとするトランプの主張を信じた盲目的な支持者が議会を占拠し、日本でも終末思想を信じたエリートがオウム事件を起こした。政治にも影響を与える陰謀論を受容するメカニズムを考えるのは、民主主義体制を守る上でも必要不可欠だ。著者は様々なサーベイ実権を通じて「政治に関心が高く自分は正しいと信じる善意の者ほど陰謀論に染まる」パターンを導き出す。SNSで情報が氾濫する中で、耳ざわりが良い情報に飛びついてしまうのだ。陰謀論から身を守るには理想も正しさも求めないのがベストとは、改めて人の心の弱さを痛感させられる。2023/02/24
skunk_c
85
まず陰謀論を定義し、統計的手法を用いて陰謀論がどのような媒体を通じ、どのような人々に広がりやすいかを示す。統計的手法については詳細な解説は別書をとのことで、本書で理解できない部分はとりあえず「正しいもの」と仮定して読むしかなかった。結論で面白かったのが「自分は普通と思う人々」のバイアス。陰謀論には誰でも陥る可能性があり、政治に関心が深い人の方が危ないので「ほどほどに」とあるが、自己の認識に対する検証や、確証のない情報に対する疑いなどの習慣を定着させる方が重要だと思うのだが。やや消化不良なものを感じた。2023/09/28
HANA
77
現代日本における政治的陰謀論を、科学的実証を元に分析した一冊。SNSや保守・リベラル、政治に詳しい人といったものが対象とされている。今まで思い込んでいた事が覆る事実、Twitterに利用頻度が高いと陰謀論との関係は低くなる。とか政治に詳しい人ほど陰謀論に嵌りやすい。とかまさに目から鱗。民法の政治番組が一番陰謀論と相性がいいのはむべなるかなだけど。この辺を読んでいるとエコーチェンバーと誰しも無関係には居られないのね。陰謀論に対する処方は対象とある程度の距離を置き冷静な視座を保つしかなさそうだけど難しいなあ。2022/10/27
ふみあき
66
著者の統計学に基づいた実証的な研究によると、日常的なトピックにしか興味のない政治的無関心層よりも、普段から公共心旺盛な層のほうが、むしろ陰謀論にハマりやすいという。保守(と言うか「普通の日本人」という自称を好む連中)の杜撰な陰謀論に比べれば、リベラルのそれはいくらかソフィスティケートされているとしても、左右を問わず、その傾向が見られるようだ。また、ナルシシストで疎外感を抱いている人ほど陰謀論と親和性が高いそうで、私の身近にも反ワクチン論を吹聴してるカルト信者がいるけど、見事にその人物像に合致しているなー。2022/12/12
なかしー
59
明日はわが身?もしかして今も?なんて思って読んでみた。陰謀論の話題になりやすいテーマや使っている情報媒体、年齢層などを丹念な調査と分析で実態像に迫る作品。テーマ陰謀論でもあり、本書自体も何某かの言説へ誘導する作品か?と慎重な心持ちで読んだが、中立的な立場で決めつけなしな言い回しだったのが良かった。後、「普通の人」って一体誰のことを指しているのか?改めて考えさせられた。私自身もよく「普通」という言葉を使うが、それは「私にとって」という条件付きであること認識しながら使う必要があると思いました。2024/12/18
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