岩波新書<br> 日本中世の民衆世界 - 西京神人の千年

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岩波新書
日本中世の民衆世界 - 西京神人の千年

  • 著者名:三枝暁子
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • 岩波書店(2022/10発売)
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  • ISBN:9784004319429

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内容説明

さまざまな社会集団や権力が併存し,紛争の解決手段としてしばしば暴力をふるう.より強大な力をもつ幕府が,それらを統合・支配しようとする.日本の中世は殺伐とした時代だ.本書は,千年の命脈を現代にまで保つ京都・西京神人に焦点をあて,生業と祭祀を紐帯に,苛烈な世界をたくましく生き抜いた民衆の姿を描く.

目次

はじめに
闘う神人たち
中世を捉え直す
「西京」と「西京神人」
小野晃嗣と網野善彦
語られた歴史を聞く
第一章 「西京」の成立――中世京都の空間
平安京の成立と西京
北野天満宮の創祀
安楽寺天満宮の創祀
中世京都の空間と支配
都市京都の社会構造
第二章 生業の展開
 業の展開
 業をめぐる由緒
 業の独占
請文の伝来
第三章 北野祭と西京神人
北野祭の成立と展開
祭礼の再編
義満の北野祭見物──統治主体の変換
北野祭から瑞饋祭へ
第四章 神供奉納と 業――画期としての「文安の 騒動」
西京「七保」の成立
七保の様相
 業の独占権をめぐる攻防と正長の土一揆
文安の 騒動
 騒動の痕跡
第五章 武家被官化と戦乱――中世末期の西京神人
伊勢氏の西京支配
西京神人の伊勢氏被官化
 業独占への執着
室町将軍への奉仕と「甲の御供」
第六章 神職と 業――近世の西京神人
 業の衰退と「神人」身分の存続
補任運動の展開
菜種の御供
神人交名と御供所
瑞饋祭の隆盛
第七章 神仏分離を越えて――近代から現代へ
神仏分離と御供所
瑞饋祭の中絶と復興
安楽寺天満宮の復興
七保会の成立
おわりに
参考文献
図表出典一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

66
京都西京、北野天満宮に属し麹の製造販売に携わる西京神人。本書は北野天満宮の成立から明治を経て現在までの彼らの歴史を追った一冊となっている。歴史小説でよく出る油座のように中世の「座」のように麹に関しては完全に手中に収めていたイメージがあったが、比叡山や幕府との権力関係からそれほど盤石ではなく、むしろ早々とそれを失っていたのは以外。それでも室町時代には北野社に立て籠もったり独自の祭祀を発展させたりと、その歴史は興味深いものばかり。現在でも共同体としての繋がりはあるみたいだし、何と言うか民衆の逞しさを感じれる。2023/01/09

venturingbeyond

33
北野天満宮を本所とする麹座にルーツを持つ京都・西京の神人コミュニティの千年の来歴をまとめた著作。北野天満宮や西京の寺社に伝わる文献記録を元に、中世民衆のバイタリティあふれる姿を生き生きと描く民衆史・社会史の佳作です。中世の神人にルーツを持つ人々が、現在に至るまで、祭祀の継承を中心にコミュニティを維持し、そのコミュニティに著者が知己を得たことで、歴史に登場する人々の姿が、具体的な「顔」を持ち、「生活」を営むリアリティのある存在として現れてくる。“doing history”の言葉がよく分かる一冊。2024/07/18

25
北野天満宮に属する西京神人からなる共同体が麹の製造販売を独占し、室町幕府と対立したり、彼らのために兵を出したり、伊勢氏(!)に被官したりといった歴史を追った本。近世にもなると麹製造からは完璧に離れちゃってるのに、それまでの権威は生きていて、今につながる瑞饋みこし等として残ってるのが興味深い。じっくりと腰を据えて取り組まれたフィールドワークであり、こういう本がもっと読みたいなあと思った。2022/12/17

浅香山三郎

11
著者には『京都 天神をまつる人々』の著書もあり、この本も買つてあるはずだが、見当たらず。中世の「西京」の住民である北野神人の生業・共同体について、ずいき祭の構造をあきらかにすることで、これまでの日本中世史研究の理解に更に厚みをもたせる試み。西京の事例であるが、中世の社会全般の神と人、権力と地域社会、そして近世におけるその残像のやうなものを考へさせる材料を提示しているやうに思ふ。2023/09/07

不純文學交遊録

11
平安京の北野天満宮領に居住し、酒造りに欠かせない麹業を営んでいた西京神人(にしのきょうじにん)。神人とは神社と結びついた商工業者である。足利義満から酒麹役(酒造業・麹業に対する課税)を免除される代わりに、北野天満宮の神事や祭礼を負担した。麹業の独占権を守るべく、武器を取って幕府軍と戦うことすらあった。朝廷→幕府→新政府と政権は変わっても、西京神人は現代まで続いている。口絵写真の川井家は応仁元年の建築と伝わるが、残念ながら今はもうない。跡地からは室町時代の遺構が発掘されている。2022/12/30

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