鉄道小説

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鉄道小説

  • ISBN:9784330064222

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内容説明

1872年、新橋~横浜間に日本初の鉄道が開業。2022年、この国には世界に類をみない鉄道網が広がっています。150年の間、枝葉をのばすように広がってきた鉄道は、線路の数、車両の数、駅の数だけ、そして列車に乗った人の数だけ物語を生み出してきました。個人史と鉄道のさまざまな風景が交差する、“人と鉄道の記憶”についての物語を5人の作家が執筆。「これは、自分の/あの人のことかもしれない」と各々の記憶に思いをはせることができるような、長い歴史のレールの先につづくあたらしい「鉄道小説」をお届けします。

目次

■著者・作品紹介(掲載順)
「犬馬と鎌ケ谷大仏」 乗代雄介
朝夕、飼い犬ペルとの散歩を欠かさないフリーターの坂本。ある日、家の天袋から小学校の時の発表で使った模造紙が見つかる。鎌ケ谷大仏。江戸幕府の野馬土手、土地の開墾、新京成線。ペルと一緒に、町の歴史と「松田さん」との思い出をたどる散歩が始まる。
のりしろ・ゆうすけ
1986年、北海道江別市生まれ。2015年『十七八より』で第58回群像新人文学賞を受賞しデビュー。18年『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞受賞。21年『旅する練習』で第34回三島由紀夫賞、第37回坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『最高の任務』『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』『皆のあらばしり』『パパイヤ・ママイヤ』など。
「ぼくと母の国々」 温又柔
台湾に帰ろうと思ってるの、と母は言った――。3歳で両親とともに来日した勇輝は、中学生の時に帰化して苗字が「黄」から「横山」になった。緑色一色の山手線、亡くなった父、日本語を話す祖父母。蘇る記憶の中で見つめる、日本と台湾の物語。
おん・ゆうじゅう
1980年、台湾・台北生まれ。両親とも台湾人。幼少時に来日し、東京で成長する。著作に『真ん中の子どもたち』(集英社)、『空港時光』(河出書房新社)、『魯肉飯のさえずり』(中央公論新社)、『永遠年軽』(講談社)、木村友祐との往復書簡『私とあなたのあいだ いま、この国で生きるということ』(明石書店)、編著『李良枝セレクション』(白水社)など。近刊に『祝宴』(新潮社)。
「行かなかった遊園地と非心霊写真」 澤村伊智
「これね、心霊写真なんですよ」。怪談作家になることを諦めたばかりのフリーの文筆業・伊澤の元に、不意に舞い込んできた「怪談」。1989年、阪急宝塚線の中山駅と当時の最新車両8000系。偶然出会った同郷の山田が見せた写真の中で、はにかんだ笑みを浮かべる少年とは――。
さわむら・いち
1979年、大阪府生まれ。東京都在住。2015年『ぼぎわん』(刊行時『ぼぎわんが、来る』に改題)で第22回ホラー小説大賞〈大賞〉を受賞しデビュー。19年「学校は死の匂い」で第72回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞。著作に『ずうのめ人形』『ししりばの家』『うるはしみにくし あなたのともだち』『怖ガラセ屋サン』『怪談小説という名の小説怪談』など。
「反対方向行き」 滝口悠生
湘南新宿ラインのボックス席に座り、亡き祖父・竹春の家に向かうなつめ。そのはずが、列車は目的地の宇都宮から遠ざかり、神奈川方面へ向かっていた。もう戻れないはずの時間、もういないはずのひとの記憶と、思いがけない出会いが交錯する旅の一日。
たきぐち・ゆうしょう
1982年、東京都生まれ。2011年「楽器」で新潮新人賞を受賞しデビュー。15年『愛と人生』で野間文芸新人賞、16年『死んでいない者』で芥川賞受賞。著書に『寝相』『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』『茄子の輝き』『高架線』『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』『長い一日』『往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ』(植本一子氏との共著)『水平線』など。
「青森トラム」 能町みね子
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちょろこ

143
ほっこり&ホラーの一冊。5人の作家さんが描く、主人公たちの思い出と今現在に鉄道を沿わせた5鉄道物語。スタートの乗代雄介さんからじんわり温かい気持ちにさせられた。思い出に沿う新京成線、歴史、老犬、恋が絶妙なバランスで配置された完成度の高さに拍手。このままほっこりが続くのかと思いきや、やっぱり澤村伊智さん。そうは来ないよね〜、阪急電鉄ホラーで一発ゾッ。思い出からホラーへの落とし込みが絶妙。鉄道って今日も今日とて乗客の人生を、1日の悲喜こもごもを乗せてガタゴト走っているんだな…なんて思いを馳せた水曜の夜。2023/05/17

モルク

114
鉄道開業150年交通新聞社鉄道文芸プロジェクトの制作による5人の作家さんのアンソロジー。澤村伊智さん目当てだったけど初読み作家さんもいて楽しく読了。鉄道がガッツリ出てくるのではなく、全体的にほっこりする話の中で澤村さんが異彩を放つ。今はないファミリーランドが出てきて、どこか懐かしさのなかにゾワゾワ感も確かに味わえる。2023/07/15

みかん🍊

94
5作のアンソロジー、「反対方向行き」は湘南ラインを宇都宮へ行く予定が間違えて小田原行きに乗ってしまう、その中でつれづれと思いをはせる、たまには間違えて反対方向の鉄道に乗ってしまうのもいい、「青森トラム」は東京から叔母の住む青森へ引っ越してきた主人公がトラムで街を散策する、青森はいった事無くてこんなに都会で開放的な街だったとは知らな、かった、鉄道開業150周年という割に思ったより鉄分少な目鉄道に乗りたくなる小説は少なかった。2022/11/10

fwhd8325

89
鉄道開業150年と言うことで、イベントも多く開催されています。鉄ちゃんではないですが、鉄道の姿を見たりするのは好きです。落語の世界にも鉄道を題材にした落語を演じる噺家さんがいます。鉄道は、生活になくてはならないもので、そこにドラマが生まれることも多いと思います。ここに5編の鉄道をテーマにした小説があります。果たして、鉄道小説と括れるのかはさておいて、切り口はユニークだと感じました。乗代さん、澤村さんの作品が好きです。2023/02/11

うっちー

79
さすが一流作家さん達の短編集でした2023/01/30

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