内容説明
5年に1度行われ、世界三大音楽コンクールで最も権威があるショパン・コンクール。
若きピアニストの登竜門として有名なその第18回大会は、日本そして世界中でかつてない注目を集めた。
デビュー以来 “一番チケットが取れないピアニスト” 反田恭平が日本人として51年ぶりに2位、
前回大会も活躍した小林愛実が4位とダブル入賞をはたし、YouTuberとしても活躍する角野隼斗、
進藤実優、牛田智大、沢田蒼梧らの日本勢も大健闘した。
さらに、優勝したブルース・リウ、同率2位のガジェヴ、3位のガルシア・ガルシアなど、予選・本選を戦ったピアニストたちは皆レベルが高く個性的で、彼らは既存の価値観を覆すような “革命的な” 演奏を見せた。
これまでと大きく変わった今大会の現場では何が起こっていたのか?
音と言葉を自在に操る著者が検証する。
目次
はじめに
一 「リアル・ショパン」を求めて
二 二人のサムライ
三 審査員をも屈伏させた天然ガルガルと哲学者ガジェヴ
四 ダン・タイ・ソン・チルドレン
五 小林愛実のピアニッシモと西陣織のドレス
六 分断される審査員たち
七 天は二物を与えたまいし
八 プレッシャーと戦ったポーランド勢
九 動画配信の落とし穴 ――ネット時代の新たな問題点
一〇 ふたたび「リアル・ショパン」
エピローグ――本当のスタート
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
126
サッカーに興味ない私には、ワールドカップで騒ぐ人たちが全く理解できないが、思えば、毎晩ネットで生中継されるショパン・コンクールの演奏と審査結果に釘付けになっていた一年前の自分と同じなのかも…。本書で、青柳さんは、出場者の特徴、審査員の傾向など紹介しながら、ショパン演奏のあるべき姿を問題提起する。「楽譜に忠実派」か「ロマンティック派」か、ショパニストを選ぶのかジェネラリストか、装飾的ヴァリアントの是非など、様々な論点が浮き彫りになる。「本選=協奏曲」に反対!というのが私の持論だが、青柳さんから言及はない。2022/12/22
たま
77
今年(2025)のショパンコンクール、評判のピアニストの配信を聞き較べて楽しんだ。この本は前回コンクールの見聞記だが、バランスよくコンクールを概観し問題点や魅力を整理している。ホールよりも配信の方が音も映像も良いとか、「正しい」奏法についての審査員の意見がバラバラとか(統一なできるわけないが)、コンクールってそんなもの、順位付けは参考程度のものと思う。青柳さんはすべての参加者にとても温かいが、中でもコンクールを巧みに利用して新しいキャリアに踏み出した反田恭平さんや角野隼斗さんに喝采を送っていて共感した。2025/12/17
ばう
60
★★★ 5年に一度開催されるショパンコンクール。2021年に開催された第18回大会では日本人2人が入賞した他、従来なら考えられない個性的なピアニスト達が出場し、私にとってはとてもワクワクする大会だった。その出場者、結果、審査員など総括する内容。ショパンらしさを求める従来の審査員なら決して選ばなかった様な人達が本選に残り、正統派の牛田君が落ちたりと波瀾万丈だったけれど、どれも全て審査員次第。たとえ落ちてもこれからピアニストとして成功すれば問題ない。舞台裏も含めてあれこれ知ることができて楽しかった。2023/03/07
kei302
54
反田♡小林・祝結婚。積んだまま放置していた本を取り出して読みふける。う―むm。181ページ「コンクールのために自分が理想として追求している音楽を変えたくはありません」小林vs.「あらゆる“傾向と対策”を経て統計を取った上で自らのスタンスを決めた」反田、いずみこ先生、ふたりの関係に気づいておられましたか? 密着写真で世界中に発信してたからみんな知ってたよねえ。2023/01/03
Isamash
34
1950年生まれのピアニスト文筆家の青柳いづみこ2022年10月出版著作。2021年10月ショパンコンクールの見聞録。日本人としては2位4位だった反田恭平、小林愛実は勿論、進藤実優、沢田蒼梧、角野隼人、牛田智大が取り上げられている。各々に敬意が感じられる論評。反田さんは傾向と対策を徹底し、更にオーケストラとの関係性までも構築し栄冠を得た。前回もファイナリストの小林さんは非力を、ピアニシモ部分をぎりぎりまで落とすことで乗り越えたらしい。私がファンである角野さんへの広域な音楽の開拓者としての期待も嬉しかった。2023/03/15




